6月8日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】政府の要請で非正規雇用の実態を調査したブラジル地理統計院(IBGE)は五日、国内で権利の享受もなく非正規雇用に服する労働者が九百万人に達したと発表した。この数は全労働者の約半数とみられる。最も多いのは、土木建築業で七二・八%が非正規雇用。続いて家政婦の六五%、商業の五四・七%、美容院や清掃会社、レジャーなどの五三・二%。最も少ない工業でも、三五・三%は非正規雇用で就労している。
経済のマイナス成長と解雇旋風が生み出した非正規雇用は、近代封建主義から落ちこぼれた人達の生き残りをかけた決死作戦「ブランカ・レオネ」(窮鼠)と呼ばれる。これまでIBGEは正規雇用のみを調査の対象とし、非正規雇用には一切関知しなかった。
非正規雇用者の中には、企業と雇用契約を結ぶことなく就労する労働者や許可を得ず独自経営を営む露店商、行商人、就職までの一時内職などの超零細企業経営者を含む。無職で一定収入が無くても、使用人を抱える人や無給で同族企業に就労する人は、同統計に含まない。
アングラ(地下)市場で無許可営業でも独立した大規模な組織の経営者から、老後の保障がないその日暮らしまで幅は広い。
応用経済調査院(IPEA)の統計によると、工業の非正規雇用は九一年、一五%であった。それが〇二年になると三一%と倍増した。工業はいつも正規雇用の模範であったが、下請けへの委託加工が始まってから、コスト削減のため非正規雇用が急増したという。景気が回復して雇用が再開しても、十五カ月間位は単純労働者の非正規雇用が多いと予測している。
熟練労働者でも四十五歳以上の失業者は、本職復帰が不可能とされる。このクラスの人達は餓死するか、生活水準を落とすか、誇りを捨てるしかないとみられている。家計を助けるために物売りを始め、学業を中断した青少年は多い。
非正規雇用と無許可営業の人達の所得は、全般に正規雇用者のそれより減少している。〇四年一-四月の所得は、正規雇用者で昨年同期比で〇・七%減に対し、非正規雇用者は二%減であった。購買能力では非正規雇用者が、四%減とさらに低い。所得を補うために、非正規雇用者は時間外勤務や内職で稼いでいる。
非正規雇用者と事情が酷似しているタクシーの運転手は、睡眠時間を減らし、休日を返上して仕事に精を出している。非正規雇用者は昨年三月から十四カ月連続で、所得が昨年同期比で減少し、貧困化しているとIBGEは報告した。貧困化は〇三年十二月の一二・一%減を最大として、〇四年四月は四・二六%減とややもち返したらしい。
超零細企業経営者の所得は過去十二カ月、累計で二〇%落ち込んだが三、四月は三%増とやや持ち直した。IBGEは〇三年の景気低迷下では、非正規雇用者と超零細企業経営者が最も苦境にあえぎ、過去数カ月間にさらに増加した新規就労者が労働市場に参入し、非正規雇用者に加わって所得事情を悪化させたとみている。