小さな村を訪ねた。パラナピアカバといい、往路、電車の中で何度も舌を噛みそうになる。グァラニー語で「海の見える土地」。サンパウロ市から約五十キロの距離にある。
人口は二千人ほど。鈍い赤紫色した木造の家々が集落を作っているのが特徴だ。建築にヴィクトリア様式の面影が香るのは、英国系鉄道会社の職員らが住んだ村であったせい。ビッグベンを模した時計台も残る。
二年前初めて来た時には少なかった、食堂や土産物屋が目立った。古い家屋を思い思いに利用している。村を一巡りした後、「ティーハウス」に寄り、窓の外を眺める。海岸山脈からの霧が辺りを包んでゆく。煙る時計台の先を指でなぞった。
東洋人街から一時間半、所要経費三レアル弱―。タイムトンネルを通過したかのような、日帰り旅行だった。 (大)
04/6/8