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国際化で拡大した所得格差=社会構造にメスを=外資導入で潤う上流階級=IMF要求に屈したPT

6月9日(水)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙三十一日】マルクス主義者でブラジル研究家のフランソア・チェスナイ・パリー大学教授は、グロバリゼーションは世界の統一化で、悪貨による良貨の駆逐だとみる。ブラジル社会の所得格差の是正は、社会構造の切開手術なくして永久に解決しないと述べた。
 次は教授との一問一答。
 【ルーラ政権は変革を旗印に登場したが、経済政策では何も変革していない。まだ変革の可能性があるか】 社会を変革できる可能性はある。地理統計院の発表によれば、所得格差が益々拡大した。格差是正のために、失業者や社会疎外者、下級労働者、小農など底辺の人々が選出した労働者党(PT)のはずだった。
 前大統領がルーラ大統領候補を国際通貨基金(IMF)代表に引き合わせたとき、ルーラ大統領は会合の内容を国民に説明すべきだった。IMFがPT次期政権を黙認するために、交換条件として過大な要求をしたとみる。その席で大統領は「国民がIMFの要求に納得しなければ、ブラジルが直面するのは経済問題ではなく、政治問題に直面することになる」と発言したはずだと推測する。
 【労働運動の闘士であった大統領が、IMFとの会合以来豹変したことで、従来の思想と矛盾しないか】
政権を獲得するために、PTはIMFから債務のモラトリアム回避を条件付けられたようだ。そのため従来の方針を急転回したのは、矛盾ではなく危険な賭けだったといえる。国内では経済の停滞や下層階級の不満うっ積をもたらした。
 この辺の事情を国民に説明して、理解を求めること。キューバはそれを実行し、国民から絶大な支持を得た。その代わり経済は、窒息寸前まで国際的圧力を受けた。この辺をブラジル国民がどう理解するか。
 【キューバとブラジルは、同一視できないと思うが】
 ブラジルは、人口六百万の小島ではない。財政的に豊かな大国だから同一視はできない。MST(農地占拠運動)メンバーや左翼思想家に、六〇年代のキューバ革命をブラジルに導入するのは無謀だと説得する必要がある。しかし、現状打開のために社会構造に切り口を入れる必要はある。
 【ブラジルは借金にドップリ浸かり、外債抜きに存在できないのではないか】
 それは違う。ブラジルには近代化された産業、有能な人材、自給自足できる産業構造がある。輸入に依存する資材は、極一部だ。ブラジルの外債の多くは、過去十年に導入された。それは公社の民営化や外債証券、国内企業の株式購入に、投資されたのが多い。
 ブラジルが抱える外債は、国民の汗水たらして得た利益をむさぼり、不労所得をせしめるためのパイプなのだ。ブラジルは外資が不要だったが、油断したスキに突け込まれた。逃げ道を知らない下層階級は、蟻地獄の中に突き落とされた。
 【外資がインフレを鎮静し、ブラジル経済を安定させたのではないか】 
 インフレ鎮静と経済安定で、下層階級は潤ったか。所得格差が拡大し、貧乏人は益々貧しくなった。外資で潤ったのは、一五%の上流階級だけだ。現在の経済政策は、PTも含めて一五%の人々を肥やしている。
 【グロバリゼーションから抜け出すには】
 それには、財産の私有制度と国民一人当たりの消費を統制すること。市場経済システムは現状を維持し、社会福祉を基本としたマクロ経済政策と財政投融資の統制政策を行う。キューバやソ連の方式とは異なる。
 【現政権との折衷政策は】むしろ中国式経済政策に近い。資産階級を敵に回すような極端な政策は避けて、穏和に遂行すること。現政権は過渡的段階を設け、後に目標の発展段階に到達する計画らしいが、誰のための発展か不明だ。最低賃金二百六十レアルでは、下層階級の発展は永久にない。
 【現政権に期待できるか】 私が失望したのは大統領が、他の三候補とともにIMFの念書にサインをした〇二年七月だ。それ以来、ルーラ政権に期待も落胆もしていない。