6月10日(木)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙九日】ジョゼ・ジルセウ官房長官は八日、国民が困窮の限界にあり、社会は分裂病的症状を呈していると発言した。現状打開のためには一層の経済成長が必要であると社会インフラをテーマとする財界ゼミで講演し、パロッシ財務相の経済楽観説に反論した。ブラジル経済を安全な港へ横付けした財務相の功績は認めるが、飛躍的な経済発展が可能な条件を有しながら、未だ不景気の呪縛から抜け切れずにいることを批判した。
財務相が四日、閣僚会議で述べた経済の回復と施政方針の内容とは裏腹の官房長官の発言であった。両閣僚は政権就任以来、ルーラ大統領の女房役として活躍した。官房長官は財務相の功績は認めるものの、緩慢な成長に不満をもらした。下層階級の貧窮と悲惨は限界にあり、さらなる経済発展がないなら社会の安定は保てないと警告した。
ブラジル社会は満身創痍であり、どこから治療をすべきか優先順位を決める必要がある。政府が留意するのは、社会不安や治安問題を政治危機に変容させないことで、動きが現実にあったことを示唆した。
ブラジル経済に活気があるなら、社会不安と治安問題の半分は自動的に解決されると同長官は述べた。財務相が宣言した経済回復は、困窮した社会の必要を満たしていないと評価を拒んだ。経済政策は回復だけでは不十分で、さらなる発展のための特別政策が必要だと訴えた。
同席したクーニャ下院議長はジニス不祥事以来、四面楚歌の中にある官房長官に同情した。同長官が笛吹けど踊らない政局に、焦燥感を感じたようだ。最低賃金二百六十レアルの表決でも、官房長官は財務相と対立し、孤立が目立ったと同議長はみている。
大統領府の勢力地図は、財務相の勢力圏が大きく拡張されたようだ。最近の国内総生産(GDP)の盛り上がりで、パロッシ株は値上がりしている。財政黒字でも官房長官は、黒字幅削減を求め財務相と対立した。経済政策の変更を求めた党覚書、公共サービスの価格統制、電気通信庁人事でも財務相は駒を進めた。
官房長官がいずれも背後で采配したが、党内の支持票を失いつつあった。大統領は〇五年、ジルセウ下院議長で政局を治めたいと考えているが、当の官房長官は格下げと思っている。一月の内閣改造以降、官房長官の政界根回し役は、レベロ政調会長へ取り上げられた。同長官は閣僚の目付役とされ、閣僚会議でも発言の機会を制限された。
パロッシ財務相は、官房長官との確執を一切否定。しかし、最低賃金の上院表決で官房長官の非協力的態度に対して、財務相は不満をもらした。年金と税制改革では官房長官のすご腕が功を奏したといっても過言ではないが、最賃の表決ではソッポを向かれた。
〇三年の財政収支を目出度く黒字で締められたのは、官房長官のお陰と財務相は認めた。財務相と官房長官は政策では意見を異にするが、政策の実施には官房長官の交渉能力が必要のようだ。官房長官の協力なくして政策の実施が不可能な部分もあると、財務相はその実力を買っている。