6月10日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙九日】インドネシアのタンゲラン地裁は八日、ブラジル人マルコ・アルシェール・カルドーゾ・モレイラ被告(四二)に麻薬取締り法違反で死刑の判決を云い渡した。同被告は罪状を全面的に認めており刑が確定すれば銃殺刑に処される。しかし弁護団が控訴したため刑が確定するのは高裁の判決が出る二年後となる。ブラジル政府も外交ルートを通して刑の軽減を働きかけるという。だが同被告のかつての仲間たちは「起こり得るべくして起きた事件」だと、批判の目を向けている。
同被告は昨年八月、コカイン十三・六キロを所持品の中に隠し持ってインドネシア国内空港に降り立った所を警官に摘発され、現行犯逮捕された。その後混乱に紛れて逃走に成功したが、十四日後に同国内の島の友人宅に隠れている所を逮捕された。同被告は警察の取り調べに対し、一万ドルの報酬でコカインをペルーからジャカルタに運ぶことを請け負ったと語ったという。これに対して同国の治安当局は、同被告は同国の麻薬犯罪で三本の指に入る指名手配中の人物だったとし、十三・六キロの不法所持は犯罪史上最も多い数量だったことを明らかにした。
同被告の母親のカロリーナさん(公務員、六四)は裁判傍聴にジャカルタ市を訪問しているが「判決を厳粛に受け取める」と述べた。同被告はスカイダイビングの教師で各地を回っているが、七年前にシンガポールでダイビング中に墜落して手術を受け、その費用八万ドルが未払いになっている。その借金を「自分の名誉にかけても払う」のが口ぐせで、それが犯罪に走った原因だと母親は話している。
だがブラジル・スカイダイビング協会のメンバーらは、同被告もメンバーに属していたが、麻薬常習から除名処分となり国内大会の参加も禁止されたことから海外に転出したという。今回の犯罪について「麻薬に手を染めた者の末路」とし、「スポーツと麻薬は両立しない」と指摘の上、「結局は逮捕されるか、死の道しかなかった」と手厳しく批判している。
一方でブラジル政府スポークスマンは、人道的立場から同被告を擁護するとの態度を示し、外交ルートを通じて解決を模索する方針で、取り敢えず在ジャカルタ大使館に対処するように指示したと語った。
世界でヨーロッパを除く七十八ヵ国が(日本、アメリカを含む)麻薬犯罪で死刑を適用しているが、東南アジアでは特に厳しく取り締まっており、組織に関係ない旅行者も対象になり得る。インドネシアでは二〇〇〇年一月から二十二人の外国人が死刑の判決を受けているが(大半はアフリカ人)これまでにマレー人一人のみが処刑されている。