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コラム 樹海

  「三菱」は日本を代表する企業であり、世界に知られた名門である。幕末に土佐藩の郷士の家に生まれた岩崎弥太郎は豪胆さと商才に富み大隈重信などを後ろ盾にして一代で財閥を形成した実業人であり「三菱」の創業者である。甥の久弥はカンピーナスに東山農場を経営し戦後初代の駐伯大使を務めた君塚愼氏や山本喜誉司氏らを世に送り出した▼戦後には混血児らを保護する「サンダース・ホーム」の沢田美喜がいて久弥の長女であった。このようにブラジルとの関係は真に深い。金融や重工・商事に始まり造船や保険でも人々に信じられるようになったのは、この三菱集団が一〇〇年以上もかけて培かい育てた「信用」の一字があったからにほかならない。この信頼関係が三菱自動車の「欠陥隠し」で一挙に崩れ去ってしまったのは―残念無念としか申しようがない▼パリダカ競争で何回か優勝した「パジェロ」を製造するだけの技術力はあるし企業水準は高い。が、大型車のクラッチ欠陥などマイナスの面もあったし、このために運転手が死亡するという事故も起きている。その「欠陥」を知りながらリコール対策などの措置を取らないで整備不良と逃げ切った態度は―大企業としてはおかしい。元社長・河添克彦らが逮捕されたのは、致し方あるまい▼業務上過失致死の疑いだが、これでは名門の「三菱」が泣く。消費者の目は当然ながら厳しく、車は売れない。信頼を回復するにはただ一つ。弥太郎、弥之助や久弥など創業家の苦闘と真面目さに学ぶしかあるまい。  (遯)

04/06/12