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今、勢い YOSAKOIソーラン(1)=日系社会の求心力になるか=カンポ・グランデ色鮮明に 子供たち自身の意思で踊る

6月16日(水)

 日本で十三年前に始まり、急速に拡大して行ったYOSAKOIソーラン(以下ヨサコイと略す)。その勢いは、ブラジルにも伝わり、七月十一日には第二回大会が開催される。一体、この勢いはどこから来ているのだろうか。二回目にして、参加チーム数二十一。踊り手七百名。日本では、若者の情操教育によい点と、村起こし的な要素が注目され人々は踊った。ここブラジルでも一つには、日系社会起こしの起爆剤として期待されている面があるようだ。「ISHIN」よさこいソーラングループのジェロニモ古城さん(二世・24)は「ヨサコイを踊っている人は日本への興味を持っている」と語るが、はたして、ヨサコイは日系社会の求心力となりうるだろうか。各チーム代表者らのヨサコイに対する思いに焦点をあてた。

 カンポグランデ日伯文化体育協会(木下パウロ会長)では、三年前にヨサコイを始めた。
 当時の在カンポ・グランデJICAシニアボランティアの嵯峨郁子さんが、紹介したことがきっかけだ。現在、日本語学校四恩校の山本牟美校長、ブラジル学校Visconde de Cairuの木之下ルイザ校長、同校体育教師の岡村美智先生の三人が中心となってヨサコイを子ども達に教えている。曲は、日本のヨサコイ大会で使われたものを使用し、振り付けは、主に岡村さんが行っている。「今までは、ソーラン節から漁師が働く様子をイメージしてやってきたけど、今回はカンポ・グランデの色を出していきたい」と岡村さん。
 カンポ・グランデ市内に住む各民族が踊りを競う、市役所主催のFesta das Nacoesというお祭りでは二〇〇一年、二〇〇二年とヨサコイを踊り二年連続で優勝を果たしている。白石ユリさん(18)は、なぜヨサコイを踊るのかとの問いに、「自分も楽しみながら、日本文化をみんなに見せていくため」と答える。 今回の大会に出場するのは、三十五人。平均年齢十六歳の青年グループだ。
 「子供は挑戦が好き。だから、ヨサコイをやるのも、ただ踊るだけじゃなく、何か目的を持たせたほうがいい。それは子供の向上心を育てることにもなるし、その目的に向かって子供達がヨサコイをやり続ければ、その間、子ども達は日系社会と関わりを持つことになる」。この思いから山本さんは、是非ともヨサコイ大会に参加したいと考えていた。
 マット・グロッソ・ド・スル州の州都カンポ・グランデ市。人口七十万の街には沖縄県出身者、その子孫を中心に約一万人の日系人が暮らしている。この街まで十三時間夜行バスに揺られた。サンパウロから北西に約千百キロ。
 山本さんの思いとは裏腹に、ヨサコイ大会に参加するにはあまりにも距離が遠すぎる。そのため、交通費や宿泊費など、経費が問題となり、参加するかどうか山本さんたちは悩んだ。
 そこで、山本さんたちは子どもたちを集め、「行きたいか、行きたくないか」それに行くのにはお金の問題があることを話した。
 彼女らがヨサコイを取り入れたのは、日系社会に子ども達を呼ぶ目的があった。「ヨサコイをやるほうが、青年会を開くより人が集まるよ」と、木下キヨシ君(18)が語るように、その目的は成功しているようだ。
 だが、今回、子ども達は、山本さんの思いを越え自分たちの意思でヨサコイを踊ろうとしている。
 「先生参加しよう! お金は、僕らも集めるよ!」子ども達は目を輝かせ言った。ヨサコイを踊ることは完全に子ども達自身のためになっているのだ。
 そして、この言葉に山本さんたちも参加を決心した。
 現在、子ども達は一枚三レアルのリッファを売って資金を稼いでいる。五月十六日に行われた第十九回家族慰安大運動会では、百枚のリッファを売った。リッファの景品には地元の企業が提供してくれた縫いぐるみなどを使用した。
 子ども達は、岡村さんを中心にとても楽しそうに練習をする。日本では学級崩壊が言われるが、まるで別世界だ。
 カンポ・グランデの街はとても空が広い。一年中存在するという入道雲が空に雄大な色を加える。大通りの向こうに見えた入道雲は奇麗な三角形をしており、まるで雪を被った富士山のようだった。この大きな空と、山本さんら大人たちの思いが、子供達の純粋な心を作っているように思えた。つづく。
    (米倉達也記者)
 (ブラジルYOSAKOIソーラン実行委員会事務局電話番号11・287・4199)

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