6月16日(水)
ブラジル日本都道府県人会連合会(中沢宏一会長)は「移民月間日帰り旅行」を十三日に行なった。参加者三十三名は、スザノ市の移住富士見観音を参拝し、モジ・ダス・クルーゼス市のカザロン・デ・シャーを訪ねた。朝から冷たい風が吹く寒い一日だったが、一行は新しい出会いとバスの旅を楽しんだ。
午前中は高野山真言宗南米開教区スザノ金剛寺に建立されている富士見観音へ。中沢会長が花を供えた後、一人一人が線香を供えて日系移住者無縁仏に手を合わせた。
富士見観音を建立したのは、日本海外移住家族連合会の初代事務局長、故藤川辰雄氏。観音の足元の黒石には「南米日系人の皆さん、どうぞ、ここにきて手を合わせて下さい・・・死してなお菩薩の道をひとすじに迷える人の杖とならまし」などと藤川氏の言葉が刻まれている。
故藤川氏と二十年以上の付き合いがあり、自らも伊豆大島の富士見観音を四回訪れたことのある小瀬真澄さんが、故藤川氏の海外移住者無縁仏への熱意と取り組みを説明、参加者は熱心に耳を傾けていた。
昼食にミナス料理を食べ、午後はカザロン・デ・シャーを訪れた。カザロン・デ・シャーは一九四二年に茶工場として建てられた。角材や釘を使わず、自然の木の枝振りを生かした組込み式の造りで、日本移民の文化財として唯一連邦政府から文化財の指定を受けている。
保存に取り組む陶芸家の中谷哲昇さんの説明を受けて中を見学、中谷さんが陶芸教室を開いているアトリエやガス窯も見学した。一行はカザロン・デ・シャーの独特な造りに大変興味を示し、中谷さんへの質問が跡を絶たなかった。
旅行に参加した中沢会長は、移住家族のために力を尽くした故藤川氏を偲び、「日本人は移住者をよそ者として見る意識が強い。家族でさえ移住者に対して冷たくあたる」と話した。また「ほとんど知られていない日系移民の遺産をみなさんに紹介していかないと」と語った。