6月17日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】大豆輸出業者は十五日、米国やアルゼンチンの同業者と連名で、中国政府を世界貿易機関(WTO)へ提訴する意向があることを明らかにした。植物油協会の指示に従い、大豆の検査基準を設けるように中国政府へ強く働きかけることになった。中国政府は十二日、農薬で汚染した大豆を混入したとしてブラジル業者の九〇%に対し取引停止を命じた。打開交渉のため赴いた農務省のタダノ長官の入国査証も拒否した。
中国当局による大豆の返品措置は、購入価格が高値設定であったため後悔しての値引き工作と関係者はみている。これまでにブラジルの輸出業者ADM、ブンゲ、カーギル、ドレヒューズなど大手を始め二十三社が、中国との取引停止を命じられた。中国はブラジル産大豆の二〇%、二千万トンを輸入する上顧客であり、〇四年は二十億ドルの輸出が見込まれていた。
植物油協会のロヴァテリ
会長は農務省のマサオ・タダノ長官と会見、米国やアルゼンチンの業者とも共闘の了解を取り付けた。同会長は中国政府が、単なる規格問題を輸出契約の解消にすり替える魂胆とみている。八、九月に収穫が始まる米国産大豆の買い叩きを見込んで、中国はブラジル産大豆を返品したという見方だ。
現在はブラジルが中国になぶられているが、九月は米国がなぶられる番といえそうだ。同会長は中国の策略にはめられないように、米国とアルゼンチンへ先手を打ったようだ。
ルーラ大統領訪中で合意した伯中通商協定の実務者会議のため、農務省技官からなる経済使節団は十五日に出発の予定だった。しかし、団長のタダノ長官の入国が阻止されたため訪中は中止となった。中国政府が大豆輸入に対して強硬措置を継続するなら、ブラジルの貿易収支は十億ドルの減収となり、その波及効果も計算すると大きな痛手は避けられないと関係者はみている。
種子用大豆の取り扱いは今後、細心の注意を要求される。しかし、根本的な問題は中国側の政治的かつ財政的問題と、関係者はみている。いくらブラジル政府と民間企業が品質管理に完璧を期しても、問題は中国政府の政治的なものであり、常に難癖を付けるから問題は解決しないという。
中国政府が要求する混入許容率ゼロとは、検査規格が存在しないことを意味する。許容率ゼロとは、ブラジル産大豆の中国向け輸出に禁止通告をされたと関係者はみている。取引停止を命じられた二十三社はブラジルの代表的大企業であるが、中小企業であったら全員討ち死にとなる。その後で屍を漁るのはバンザイ商法または、ハイエナ商法という手法だと業界ではいわれる。
中国大使館は、タダノ長官の入国査証を拒絶した。中国の慣習として、中国政府の招待による訪中者のみが入国を許可される。同長官は、農相代理の資格で訪中予定であった。目下ブラジル外務省が同長官の入国許可を交渉しているので、二十一日ごろには実現の見込み。中国向け大豆を積載した多数の船舶が港湾で待機しており、査証遅れは業者に支障を来している。