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今、勢い YOSAKOIソーラン(2)=日系社会の求心力になるか=日本人の気持大切に バストス踊り手の平均年齢60歳余

6月17日(木)

 朝八時、バストス日系文化体育協会(真木勝英会長)を訪れると、もう練習は始まっていた。
 三十二人のご婦人方が両手を高く上げ、汗を光らせ踊っている。バストス市婦人会チームの平均年齢は六十を越える。最年少五十歳、最高齢七十六歳!
 六月に入ってからは、月曜日から土曜日まで毎日練習だ。「もー、年だし、練習に通うのも大変よ。でも、ほんと一生懸命頑張ってるわ」と、谷口常子さんは元気に語る。
 振り付けを担当するのは光石美佐子さん。曲は日本のヨサコイ大会で使われたものを使用。衣装は全てご婦人方の手作りだ。「みんなでお揃いの衣装にするのよ」と、村上佐妥子さん。
 バストスでは、「盆踊りが昔から好きで、ずっとやりたいと思ってた」と語る現婦人会会長の薮田マルガリータさんらが中心となり、二年前から盆踊りを始めている。
 ヨサコイの動きが速いことについて「盆踊りみたいなものだと思っていたのに」と、婦人会のメンバーらは笑った。
 『移民の故郷』とも呼ばれるバストスは、周知のとおり一九二九年にブラジル拓殖組合によって開かれた日本人の街である。文協役員、宇佐見宗一さんの話では、戦前は一時期三千家族もの日本人移民が生活していたそうだ。「街の病院も学校も全部ブラ拓が作った。バストスに来れば日本のものが何でも手に入るし、日本語だけで生活できた」。
 しかし、現在日系人の数は、市の人口約二万五千人の一割にも満たず、街を歩いても、日系人を見かけることは少ない。通りの店も現在は非日系の商店がほとんどである。
 綿糸の生産で戦争景気に沸いたこの街も、戦後の不況や、七〇年代から中国産の安い綿糸が入って来たことにより、多くの日本人がいなくなっていった。
 そして、デカセギ。「デカセギの数は市の日系人の五割にもなる」と宇佐見さんはみている。働き盛りの年代の日系人が、スッポリとこの街から抜け落ちており、年配の人と子供ばかり。日本から帰っても、日系社会と関わりを持つ人は少ない。
 ブラ拓製糸株式会社から聞こえる午後五時のサイレンだけが、往時をしのばせる。
 バストス婦人部では、太鼓や踊りなど日本文化の普及に力を入れている。今回ヨサコイに参加するのも「日本文化をより根付かせるためにも、この大会に参加して大会を盛り上げて行きたい」との思いからだ。周辺の街から、遠くはパラナ州マリンガ市にまで踊りの披露に出掛ける。「いろんな学校の生徒に日本文化を教えている」と薮田さんが言うように、現在もバストス近郊の州立ツーヤ高校で「故郷太鼓」を教えている。
 ただ、「日系の子供たちは、日本文化や日系社会にあまり関心を持っていない。逆にブラジル人の方が関心が高い」と光石さんは言う。
 今回のヨサコイ大会に出ようと言い出した小林政江さん(79)は、電話越しにとてもうれしそうに声を弾ませた。「YOSAKOIソーランは日本を代表するイベントでしょ。そのイベントに『移民の故郷』バストスが参加するだけでも意味があるわ!」。
 バストスの婦人会が日本文化普及に力を入れるのは日系人がいなくなることへの反動もあるだろうが、それ以上に彼女らは『移民の故郷』に住むものとしての誇りを持っているのだ。イビラプエラでは、その思いを表現しようとしている。
 「若者が、バストスからいなくなってしまうのは確かに寂しい。残っている日系の子供達もみんなただのブラジレイロになってしまうのではないかと思うと寂しい限り」。
 「でも」と小林さんは付け加えた。「私は日本人としての気持ちを大事にして行きたい。私はもう年だから大会には出れないけど、みんなにはバストスのために、そして日本人のために踊って欲しい!」。つづく。
(米倉達也記者)
 (ブラジルYOSAKOIソーラン実行委員会事務局電話番号11・287・4199)

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