6月18日(金)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十七日】ロドリゲス農相は十六日、中国政府の大豆返品問題にルーラ大統領自身が介入すると述べた。大統領は十七日、中国の温家宝首相に電話で、ブラジル産大豆に対する異議申し立てを取りやめるよう要請する。一方、マット・グロッソ州のブライロ・マジ知事は、同問題に対する政府の対応が弱腰であると非難した。大統領一行の中国滞在時に起きた第一回目の返品で、政府は毅然とした強硬姿勢で臨むべきであったと批判した。
今後の発展に期待がかかる伯中関係は、大豆問題が最初の踏み絵になりそうだ。大統領府では十六日、農相を始めフルラン産業開発相、アモリン外相が、二十五日までに大豆問題を解決するため鳩首会談を行った。
大統領一行の五月訪中は、ブラジルの国連安保理常任理事国入りの戦略交渉と通商拡大が目的であった。時を同じくして背後から大豆返品で冷水を浴びせられたのは、伯中外交の第一教訓か。大豆返品問題が今後の両国関係にどう影響を及ぼすのか注目される。
大豆輸出業者は世界貿易機関(WTO)へ提訴の構えだが、政府は外交的に提訴の根拠が見当たらない。大豆問題に関して政府は、両手を縛られたまま唯一の国際調停機関WTOで、中国との抗争に臨むことになる。ブラジルに切り札はない。政治的に穏便解決するしか方法はないようだ。
タダノ長官の入国査証が出たので経済使節団は十八日、出発する。長官は二十一と二十二日、中国側当局者と折衝をする。経済使節団は大豆の規格基準について打ち合わせ、現在起こっている行き違いを防ぐ考えだ。中国政府は大豆返品に追い討ちをかけ、ブラジルの二十三商社に対し中国との取引停止を命じた。
大規模大豆生産者のマジ知事は、政府の対応が「ガキの使い」だと批判した。同知事は政府が、中国との気まずい関係を避けるために譲歩したとみている。中国はブラジルの弱みに付け込み、契約済みの取引に因縁をつけたのだと政府の不手際を非難した。
ブラジルは世界最大の大豆消費国である中国と友好関係を結びたいとする思惑を逆用され、中国のペースにはめられたと同知事はみている。うぶなブラジルの対中国外交は今後、独力で難関を突破するための茨の道を歩かされるだろうと同知事はいう。
大豆輸出には国際規約があり、農薬汚染の大豆混合率には許容量がある。中国向け大豆の輸出契約には、混合許容量の項が記載漏れとなっていた。輸出業者はブラジル衛生局の規格、一キロ当たりの大豆に二粒までの許容で船積みしていた。中国側は重要な部分を外し、ブラジル側はまんまとワナにかかったと、同知事はみている。
中国には物差しが各国別にあり、米国産大豆には寛容な規格が適用される。中国向け輸出契約は、慎重を要する。買ってしまったものが値下がりすると、文句をつけて突き返すか支払いでダダをこねる寸法だと、同知事は中国商法に警鐘を鳴らした。大豆の三大生産国、ブラジルと米国、アルゼンチンが手を握れば、立場が逆転すると進言した。