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戦闘機乗りの〃卵〃に 空軍の予備学校唯一の日系人 大場君、夢捨てず超難関突破して入校

6月22日(火)

  ミナス・ジェライス州バルバセーナ市(サンパウロから六百五キロ)に、ブラジル空軍の予備学校「エピカール」(EPCAR)がある。大場竹男さん(16、二世)が戦闘機のパイロットを目指して、奮闘中だ。全校生徒約四百五十人中、ただ一人の日系人(混血児生徒二人を除く)。競争率二百倍の狭き門をくぐりぬけて今年二月、入学を手にした。
 「頭が低くて、根が強い」。省三さん(55、北海道出身)、隆子さん(47、秋田県出身)夫妻は、そんな子供に育ってほしいと願って、竹男と命名した。
 実家はサンパウロ市ジャバクアラ区。航空機が毎日、上空を飛び、幼い頃から、パイロットにあこがれていたという。
 「かけっこで、よーいどんと言っても、スタートを切らないんです。でも、走り出したら、皆を抜いて、いつもトップでゴールしていました」
 十四歳の時に、「エピカール」向けの予備校に入った。定員百五十人に対して、三万人が応募する超難関校だけに、初めての受験は失敗。竹男さんは一旦、高校に進学した。だが、夢をあきらめ切れず、仮面浪人を続け、今年、悲願を達成させた。
 隆子さんは「うちは、そんなに裕福というわけではないから、今年が最後だよと言ってありました」と涙ぐむ。
 試験では学力のほかに、身体検査、心理学テストも実施される。特に、視力には厳しく、体調管理には気を使ったそう。筆記試験の成績は九十七番だったが、最終的には三十七番につけた。
 約二週間の適性検査も、無難にこなし入学を認められた。あまりにも訓練が厳しいので、ここで三人が途中辞退。学校を去った。
 同校では、給与を得ながら、高校過程のほかに初歩的な軍事訓練や国際的なエチケットなどを学ぶ。卒業すれば、空軍航空学校(ピラスヌンガ市)への道が開かれ、戦闘機に乗り込める。
 「身分証明書も書き換えて、国の子供になりました」と省三さん。空軍航空学校を出た後、五年間は国のために従事しなければならないので、子供の身が心配だ。戦地に赴く可能性もあり、この話題になると、隆子さんは一瞬、目をそむけた。
 「竹男の夢だから、私たちは応援するつもり」。二人は、子供の成長を温かく見守っている。