6月24日(木)
YOSAKOIソーラン。名前ぐらいは聞いたことあったが、それがどのようなものなのか知らなかった。ビデオで初めてヨサコイを見たが、「これは日本文化でも何でもない」、そう思った。
ヨサコイとは、日本文化なのであろうか。誰が、何のためにやっているのか。そこから、この取材が始まった。
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日系医療ボランティア団体アベウニの中に、ヨサコイを踊るグループがある。盆踊りでたまたま見かけて、興味を持ち青年文協で習ったそうだ。
彼らに若者の日系社会離れについて尋ねると、「別に意識して日系社会から離れているわけではないけど、僕らはブラジルに住んでいるから、自然とブラジル社会の方に傾いていってしまう」と答えた。彼らは日本との接点が希薄なのだ。
SOHOーGUEROPAチームのヨサコイでは北海道の荒波をイメージした振り付けを行っているが、日本的な動作によって波を表現するわけではない。「日本のダンスもかっこいいけど、それ以外のダンスも取り入れられるからヨサコイはいい」と、非日系のメンバーは語る。
ヨサコイの魅力の一つはこの自由さにある。決まった曲や振り付けはなく、自分達の好きなように踊ることができるのだ。そのため、ヨサコイは日本への興味がない人でも入りやすい。それが、日系の若者だけじゃなく、非日系人もヨサコイに加わる要因の一つだ。
そして、注目すべきは、何の関心のなかった人でも、ヨサコイを踊ることによって日本との接点が生まれることだ。
ヨサコイは、ソーラン節やよさこい節の意味を教え、それを躍りで表現させることができることから日本への関心を持たせやすい。例えば、ブラジルのヨサコイを文化的に研究している渡会環さん(上智大学大学院外国語学研究科)は、彼女が係わるISHIN(北海道青年文協)チームのメンバーについて、「自分が日系人であることや、ブラジルで育ってきたことを、彼らはヨサコイを踊る中で考えている」と話す。カストロ連の香川さんが指摘するように、「ヨサコイは決して日本の伝統的な踊りではない」。しかし、ヨサコイは日本をイメージして踊るダンスなのかも知れない。
今連載で見て来たように、各チームを引っ張る人がヨサコイにかける思いは強い。
それは、日本文化を伝える目的があったり、自分の所属する日系団体を活性化させることを期待していたりするが、ヨサコイは、そのどちらでも成果を残している。
そして、ヨサコイは大会を開催して、初めてその意義を最大限に発揮する。
カンポ・グランデ、SHIONKOチームの山本牟さんが「(大会に向かってヨサコイを踊り続ける間は)、子ども達は日系社会と関わりを持つことになる」と言ったこともあるが、それだけではない。
ヨサコイのまた別の魅力は集団で踊ることにある。 それには、「人に合わせる心」(簾田さん・PL)を必要とする。集団で一つの目標に向かうということは、とても日本的であるだ
けじゃなく、成したときにとても大きな感動が生まれる。「この感動が、ヨサコイがこんなにも人を惹きつけた最も大きな要因の一つ」と飯島秀昭さん(ブラジルYOSAKOIソーラン大会実行委員会代表)は言う。
イビラプエラ体育館に行った。目を閉じると、大きな歓声が体育館中にこだましてきた。
七月十一日。スポットライトに照らされ、踊り手たちの高揚が最高潮に達っした時、その興奮は観客にも伝わる。そして、体育館は大きな感動の波に揺れるだろう。おわり。
(米倉達也記者)
(ブラジルYOSAKOIソーラン実行委員会事務局電話番号11・287・4199)