コラム
「コーヒーの芳醇な香りと味は、千回のキスよりもすばらしい」とは、コーヒー・カンタータ(JSバッハ作曲)の一節だ。ブラジルは、カフェーの収穫期を迎えた。
「カフェ採り」はブラジル歳時記で、冬の季語。特に、初期移民には、馴染み深いものだ。ある老移民の女性の甘酸っぱい思い出話。
収穫時期になると、農場主の子どもから、毎日コーヒー豆を渡された。当時十四歳で意味がよく分からず、その場で捨ててしまった。そのうち、兄が追い払って姿を見せなくなった。
豆は横からみると、ハート型。彼が愛を告白していたのだった。気付いたのは、七十年近く経ったのちのこと。
「もしかして、ファゼンデイロのマダムになれたの?」 (古)04/06/24