6月26日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十四日】食物の栄養分と成分がガンの抑制にどのような影響を及ぼすのかを長年のテーマに、研究者は人体実験などを繰り返してきたが、その成果が徐々に表れてきた。そもそもガンと食物の因果関係は、戦後アメリカに渡った日本移民が日本で罹患しないガンにかかったことが注目され、研究が始まった。食物の栄養素が抗ガン剤の役目を果たすことが現在まで明らかにされている。特に野菜類から新しく数十種類が発見されている。しかし、医学的な臨床実験は確立されておらず、食物の組み合わせ、摂取量、摂取の期間などが今後の研究課題となっている。だがガンの手術を受けた患者が術後にゴイアバとトマトを毎日食べたら急速に快復に向かったという明るい話題もある。
ガンは現在、心臓疾患に次いで死亡率が高く、医学界はその原因と治療法に日夜研究を続けている。その中で、食物とガンの因果関係も長年研究が積み重ねられ、徐々に成果が上がってきている。
食べ物がガンの発生に直接関係があると判明したのは七〇年代に入ってからだ。戦後アメリカに移住した日本移民に日本で発病例のなかった乳ガンと腸ガンの症状が発見された。医師が原因を追求した結果、食習慣の違いでガンが発病することが明らかにされた。それまで日本で普段食べていた魚類、大豆では発生しなかったガンが、アメリカでの日常食である肉類、油ものが原因となって発病した。逆に肺ガンの発病率が減少したのは、アメリカのオレンジジュースの効用であることが分かった。これにより食べ物のガンへの影響がクローズアップされるようになった。
ブラジル国立ガンセンターによると、近年の研究で野菜に含まれるフィトキミコと呼ばれる栄養素が数十種類発見され、これが他の食物要素とくっ付いてガン細胞を滅亡させる働きをすることが実験で明らかになった。
システム・コンサルタントのモライスさん(五〇)は、「胃ガンと判ってから、毎日ゴイアバとトマトを食べ続けた」と話し、手術をした主治医も急速な回復に驚きを隠せないでいるという。医師は、データが未確認で医学的にコメント出来ないが、この食べ物に効用があったことは事実だとしている。要は適量の野菜と果物を「根気よく長期間摂ること」が必要だと強調している。
サンパウロ市で十六日から十九日までの期間で開催される第一回ブラジル・ガンと栄養学会で、特別名誉講師として招待されたフランス人のリボリ博士は、ヨーロッパでガンの権威とされている。同博士はこれまでの十五年間、ヨーロッパ十カ国でボランティア五十三万人の食生活を調査してガンとの関係を研究してきた。この結果、二万八千人がガンにかかったことがわかった。発病率はフランス・イギリス・スイスの順で高く、食べ物で共通しているのは、砂糖、バター、乳製品のほか、ポテト、ケーキ、清涼飲水だった。逆に一番少ないスペインの日常食は野菜、青果物、卵、魚、ミルクなどだった。
これまでの調査・研究をもとに、ガンに効用がある食物とガンの種類は次の通り。
▼にんにく=胃
▼米、パン、穀類、豆野菜、葉野菜=直腸、食道、胃、大腸
▼オリーブ油=胃、乳
▼くるみ類=食道、胃
▼緑茶=食道、胃、すい臓、前立腺、膀胱
▼フェイジョン、豆野菜=口腔、咽頭、喉頭
▼柑橘類(レモン、みかん)=胃、口腔、咽頭、食道、肺、すい臓
▼野生果物(桑、イチゴ)=肺
▼魚(鮭、にしん、いわし)=口腔、のど、直腸、すい臓、乳、前立腺、大腸
▼大豆=前立腺
▼トマト、ピーマン(赤)、ゴイアバ(赤)=前立腺、消化器、乳
▼野菜(ブロッコリ、キャベツ、カリフラワー類)=肺、食道、乳腺、前立腺、肝臓、小腸、ぼうこう、大腸