6月26日(土)
「祖国日本に少しでも良くなって欲しい。そんな思いで投票に来ました」。
十一歳で移住した村山種秀さん(91、鹿児島県出身)は公館投票初日の二十五日午前、サンパウロ総領事館で投票を終え、晴れ晴れとした表情で語った。
小学校五年生まで日本で通っていた。「こっちへ来て八十年経ったけど、日本人だから投票した。生まれて初めて、もしかしたら最後かもしれないけどね」。
民主党に一票投じた。「新聞を読んでいたら、自民党のままでは心配になったから」とその理由を説明する。
「外国から見たら、日本の政治はなってないですね」。午前七時半、同総領事館初の公館投票に一番最初に駆けつけた山本秀男さん(75、岡山県出身)は日本の政治の現状に注文をつける。「我々は日本人だから、日本人の血が通っているから、投票する義務があると思う」。
山本さんは一歳に満たない時に渡伯。前二回は郵便投票し、今回三回目だ。「一般の日本国民は政治に対する関心が薄すぎる。自分の国を良くしようという思いが薄い。私たちはいつも日本のことを考えている。第一の祖国は日本で第二がブラジルです」。夫人の静江さん、姉の小原敏江さんと、尾崎美代子さん四人で投票にきた。
二重国籍の二宮巌さん(69)は初めて日本の投票を経験した。「ブラジルの投票より、日本の方がキチンとしていて、丁寧な係員の対応に感心しました」と感想を述べた。
巌さんの兄、国隆さん(75、鹿児島)はサンカエターノ市在住。日本の政治情勢については「さあ、さっぱりわかりませんね。ただ、親から聞いていた日本とはだいぶ違って荒れてしまっているようですね」。
今回で三回目の投票になる中村スミさん(75、鹿児島県)は「こっちに住んでいる人にも年金とか送って欲しいと思って」という。
菅生俊雄さん(79、秋田県)は、投票して「生きとって良かったと思いました」と喜ぶ。九歳で渡伯した。「日本から見捨てられたのと同じだから、選挙権持つなんて夢にも思わなかった。だから、一票を入れなきゃと思って」。自民党へ投じた。
郵便投票は面倒くさいからやらなかったという一条幸子さん(78、北海道)は、「今の日本は狂っている。未成年犯罪とか医療ミスとか。信じられないですね。そんな日本が少しでも良くなってくれればと思って投票しました」と、公明党へ入れた。
また、一条さんは「昔のお役人に比べたら、今の総領事館の人はとっても丁寧で、ビックリするぐらいですね」と感想を語った。
投票して「日本人として誇りを感じた」という夫の今川精逸さん(85、愛媛県)と共にきたエミコさん(84、広島県)。「日本の偉い人が一杯悪いことしていますよね。まあ、ブラジルもそうですけど。でも、日本の人は頭だけ下げたら終わりみたいですけどね。もっと厳しく追及した方がいいと思います」と考え、夫婦共に公明党に入れた。
選挙が終了する七月三日まで続々と、それぞれに熱い想いを抱いた有権者たちが、さらに総領事館を訪れるだろう。