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ブラジル人売春婦7万5千人=欧州各国へ出稼ぎ=重労働、虐待を受けるケースも=実態把握せぬ政府

7月2日(金)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙六月十六日】ブラジル人女性七万五千人が旧ヨーロッパ大陸でセックス産業の一員として従事している。このほとんどがブラジルの不況下から抜け出した女性で、一部は本国の家族に送金していることから売春の出稼ぎ現象といわれている。これは国際機関の報告によるものだが、現在、実数はさらに多いとされている。特に二〇〇一年九月にアメリカで起きた同時多発テロ以降、アメリカの入国管理が厳しくなったことからヨーロッパ指向が強まった。ブラジル政府は国際機関に非加盟のため実態を把握すらしていない。

 国際移民機構(OIM)がこの程発表した旧ヨーロッパ大陸への移住の実態報告によると、大陸内のブラジル人売春婦が七万五千人に上るという。これは一九九八年・二〇〇一年の調査結果で、現在はさらに増加の傾向にあるという。また、この裏には国際的な売春斡旋ルートが暗躍しているとも報告されている。スペイン当局の捜査によると、同国には千八百人のブラジル人売春婦がおり、ブラジル―スペイン間の斡旋ルートで三十二組織が明るみになっているという。その他ではオランダ、スイス、ドイツ、イタリア、オーストリアが主なルートになっている。このほとんどが不法入国者だが、ブラジルから出国する際は制限のないポルトガルに一旦入国し、ここから移動する。出国の際は偽造身分証明書で本国での身許がバレない様にしている。このルートで移住すると経費の立て替え払いと称して莫大な借金を背負され、重労働や虐待を受ける実態も明るみになっているという。ヨーロッパへの不法入国者の増加は、それまで安易に入国できた(中南米経由)米国で二〇〇一年九月十一日に発生した同時多発テロ以降、入国管理が厳しくなったのと、不法滞在者の取締り強化が原因となっている。
 スイス国内の売春婦の実数は定かではないが、同国の日刊紙ル・マティン紙には連日「当方ブラジル美人、毎日午前九時から午後九時まで相手します」の広告が掲載されている。エスタード紙の記者がニナと名乗る女性と話したところ、彼女はリオでダンサーをしていたが、十一年前にスイスに移住、スイス人と結婚したが七年間で破局に至り現在の職業に就いたという。料金は一回が二百レアル(換算)、スイス人としてのパスポートを保有しているのが自慢だ。さらにジュネーブ市内で三階建てのビルに四十人のブラジル人売春婦が同居しているという。
 いっぽうで同機構の報告によると、スイスに潜入している国際テロリストの幹部が居住権を得るために同国内のブラジル人を結婚相手に求めるケースが多い。同国当局に摘発されるのは、バングラディシュのテロリストが多く、妻となるブラジル女性に十万レアル相当を支払ったとのこと。
 ヨーロッパへの移住は年々増加しており、ポルトガルでは、一九八九年に一万五百人だったのが二〇〇一年に二万三千五百人に増えた。言葉に不自由しないという理由のほか、高度成長により、ブラジル人が同国人と同等の待遇を受けたのが主な原因。しかし近年になり、移住者の質が低下、建築作業員や家政婦などが著しく増加している。スペインも同様に九六年の五千人から〇三年は一万四千五百人となった。スイスでは二〇〇〇年の八千人に対し〇二年は一万人となったが、その代わり不法滞在者は一万人から一万五千人といわれている。彼ら〃出稼ぎ〃は、家族への送金などで外貨獲得の担い手となっており、ラテン・アメリカ圏では〇三年、三百八十億ドルが流入、ブラジルへは米国、日本、ヨーロッパから五十二億ドルが流入した。
 欧州への移住者および移民者への対策がおろそかだとの指摘を受けていることから、ブラジル政府は数ヵ月以内にOIMに遅まきながら加盟するとの態度を表明しているが、役割分担や予算配分を巡って各省が討議している段階だ。OIMには現在世界百五ヵ国が加盟しており、南米地区ではボリビアのラパスに本部がある。