7月3日(土)
大きなサーラと台所、庭には仲間を呼んでシュラスコのフェスタを開けるスペースが欲しい。日本での永住を考えるデカセギの中に、ブラジルらしい間取りを持った住宅を建設する人が増えている。狭くて薄暗い建売住宅の目立つ日本。デカセギが望む「家」の形とは相容れない点もある。そんな生活文化の違いが、ブラジル風住宅ブームの向こうに透けて見える。
六月二十六日付インターナショナル・プレス紙。東京在住の建築士ウエダ・ユウイチ・アントニオさん(47)は話す。
「最近日本では、注文住宅を希望する人が多い。日本に住むブラジル人も、ブラジルの家に住んでいるような錯覚を覚える造りを注文するようになっている。例えば来客用の部屋や大きな台所を備えた家ですね」
静岡県榛原町。ハラ・エミコ・スエリ(26)さん、ヤマダ・ミツヒト・マルセロ(31)さん夫婦は「家族のことを第一に考えた。他府県で働いていた両親が失業し、同居を希望していた」ことが住宅購入の決め手となった。
高齢の両親は一階の部屋、二階には五歳の息子と夫婦用に一部屋づつ、来客用寝室は四部屋も。
「毎月ローンを払っているが、家はいつか自分のものになる。たとえある日、三千万円の建物と土地ローン契約を破棄しても、払った分は残る」とヤマダさんはいう。「でも一番喜びを感じるのは、ブラジルに住んでいたときのように、皆一緒に同じ家に住んで、一家そろって母親の手料理が食べられること」
土地が狭く、周囲に住宅が密集しているので、シュラスケイラを設置できないのが悩みといえば悩みだ。
日本在住十三年、千葉県在住のナカムラ・フェルナンドさん(30)は「いつブラジルに永住帰国するかも分からないので、投資先として住宅を購入した」。 畳部屋として設計されていた床はすべて板張りに変更。サーラの空間を拡張するなど、広々とした間取りが自慢だ。家賃を支払う必要がなくなったことも「開放感」に繋がっている。
静岡県富士宮市に住む、オノ・ケイコさん(45)、ハヤシダ・ケンイチ・ウイルソンさん(46)夫婦。三人の子供のために、ブラジルの田舎で暮らしているような生活をと考え、家を設計した。
まだ図面の段階だが、家を囲んでいる風通しのよいベランダ、そこにはハンモックが吊ってある。週末には友人を集め庭でシュラスコしつつ雑談などして過ごしたいと将来像を描く。各部屋の仕切りはふすまでなく、鍵付きのドアで、プライバシーを確保しているのも特徴だ。
経済的に安定しつつある永住希望のデカセギたちが、空前のブラジル風住宅ブームを支えている。前出の建築士ウエダさんは、「大きなリビングルーム、明かりを取り入れる大きな窓、大きな台所にシュラスケイラなど、ブラジル人としての性格や、ブラジルでの生活環境の影響を受けた設計依頼が目立ってきた」と話している。