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「あゝ東京行進曲」=6日から本紙連載

7月3日(土)

  日本で活躍する劇団「1980」が十一月六日のマナウスを皮切りにベレン、ブラジリア、サンパウロなど国内九都市を巡業公演する。十二月二日にはパラグアイ・イグアス移住地での上演も決まっている。演目は劇団の代表作「素劇 あゝ東京行進曲」。日本初のレコード歌手、佐藤千夜子の生涯を追いつつ、昭和の日本人像にも迫った作品だ。九三年には読売演劇大賞を受賞している。
 原作は結城亮一氏の「あゝ東京行進曲」で、結城氏の好意から本紙三面で六日から連載小説として掲載する運びとなった。結城氏のプロフィールと、劇団主宰の藤田傳氏から届いたメッセージを紹介する。

 藤田氏の話

 今から十年近く前になるだろう。ブラジルへ渡った人たちの「彼の地での日本人」を訪ねて(脚本執筆の取材のため)、初めてサンパウロに降り立った。時計の針を見て驚いた。丁度同じ時刻。まさに真逆の地である。
 サンパウロ、リオ、マナウス、イグアスと取材を続けながら、際限のない雄大さと、地球の神秘に驚愕の日々を重ねた。取材ノートを文字で埋め、二度と訪れることはないであろう記憶と共にブラジルを発ったが・・・。
 そこへ再び足を運ぶとは―――!!
 「あゝ東京行進曲」は、レコード歌手第一号であり、映画主題歌を歌った最初の人、佐藤千夜子の波乱の生涯を、結城亮一さんが克明に集めた資料を基に、寸分の隙なく綴った、或る意味でのドキュメンタリーであり、同時に佐藤千夜子が生きた昭和の時代史でもある。
 結城さんがもがいて綴った千夜子の爪痕。それを私共劇団「1980」の舞台ともども少しでも感じて頂ければ、イグアスの滝に沈む夕陽のように感激である。
       
 結城氏の略歴

 一九三七年、山形県生まれ。國學院大卒。作家、日大山形高等学校教諭。七六年、河出書房新社より「あゝ東京行進曲」を出版。この作品が原作となり翌七七年、NHK朝の連続テレビ小説「いちばん星」として半年間放映。八二年、劇団「1980」主宰者・藤田傳脚本、関矢幸雄演出による「鬼宴の会」にて舞台化初演を迎える。
 九三年には劇団「1980」で「素劇あゝ東京行進曲」として初演。現在も全国各地で公演されている。
主著に「あゝ東京行進曲」、随筆集『トイレの灰皿』などがある。