「この町が大好きだ/サン・ポールは心にしっくりくる/ここには伝統なんかない/偏見がない/古代的でも近代的でもない……」。スイスの詩人ブーレーズの詩篇「サン・ポール」の始まり。描かれるのは一九二四年のサンパウロである。
それから八十年。高さ百五メートル、バネスパ・ビルの屋上にいる。コンクリート建築としてはアメリカ大陸で一番の高さを誇るビルだ。
眼下にはサン・ジョアン通り。「電車 自動車 電車 電車 電車 電車」と描写したブーレーズだが、いまは「自動車 自動車」に変貌。歩く市民の数はかつての比ではない。外国移民の子孫たち、それに東北地方からの国内移住者も多い。
九日は「護憲革命」の祝日。州民の団結を記念する日となる。パウリスタの「象徴」の天辺にたって、「この町が大好きだ、しっくりくる」と叫んでみる。 (大)
04/07/06