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「俳句」「短歌」よその国の事情(7)=サンフランシスコ北加に根付く茂吉の魂=多田隈さん伝統守り、新しい息吹を

7月7日(水)

  多田隈良子さん=米サンフランシスコ=は現在、東津久仁短歌会の主幹を務めている。東津久仁短歌会は、戦前からの句会で、多田隈さんが入会したときには、約二十五人の一世たちが活発に活動していた。
 あれから五十年あまり。会員たちはひとりひとり後を追うように亡くなっていき、現在では七人が毎月作品を出している。会員たちは徐々に高齢となり、昔のように集い、歌評を言い合うことはできなくなったという。
 多田隈さんが短歌を始めたのは、十四歳のころ。高等女学校時代、若山牧水の歌に引かれ、本格的に短歌を学んだ。まもなく、多田隈さんは斉藤茂吉に直接指導を受ける機会を持つ。そのことをきっかけに、ますます短歌にのめり込んでいった多田隈さんは二年後、斉藤茂吉の愛弟子である佐藤佐太郎が主幹を務める「歩道」に入会。米国に来てからも、東津久仁短歌会と同時に、歩道への作歌を続けた。
 短歌は、米国に住んでいる自分にとって「日本人としての心のよりどころ」だという多田隈さん。句ひとつひとつに、師である斉藤茂吉の、佐藤佐太郎から引き継いだ魂を込める。「最近、短歌の心が失われている」と嘆く多田隈さん。新しい短歌の風潮を良しとせず、米国で今も斉藤らの信念を忠実に守る。
 北カリフォルニア州の短歌、俳句、川柳のグループ共通の思いである「若い人が入らず、会員の数が年々減っている」のは、東津久仁短歌会も同じ。多田隈さんも、知り合った人たちに声をかけるが、なかなか会員になろうという人は現れない。断る人たちの理由は、「忙しいし…」「読むのは好きだけど、作るのは…」などさまざまだ。
 だが、多田隈さんは「案外短歌を好む人は多い」という。作り方さえ分かれば、短歌のファンも増えるのではと、「初歩の会」を作り、短歌の初心者たちに作り方を教えることを画策中だ。
 短歌は「お金のかからない趣味」。だからこそ、みんなに勧めたいという多田隈さん。斉藤茂吉の魂を引き継いだ人物が、遠いここ北カリフォルニアの地で、彼の魂を根付かそうと努力している。

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