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第1回海外日系文芸祭の開催に寄せて=選考委員長 小塩 卓哉

7月9日(金)

  「世界規模で、日系人のための文芸祭が開催されるのは今回が初めて」―第一回海外日系文芸祭の小塩卓哉選考委員長は、このほどニッケイ新聞社にメッセージを寄せ、そのなかでこう記述している。小塩氏はいつも移民の琴線に触れる評論を展開している歌人・評論家。文芸祭は俳句と短歌を通して海外日系社会と日本との国際交流をはかろうとするもので、作品募集は、去る六月三十日、締め切られ、整理のため一括日本に送付された。授賞式は来る十月三十一日、横浜で行われる。以下小塩氏のメッセージ。

 この度海外日系新聞放送協会設立三十周年を記念して、第一回海外日系文芸祭を開催する運びとなりました。海外の日系移住者は、短歌・俳句などの文芸を移住初期の段階から愛好し、多くの雑誌や集まりを通じて、積極的に作品を発表してきました。また、各地で発行されている邦字新聞も、そのような作品の格好の発表場所として長く機能してきた歴史があります。北米、ハワイ、ブラジルといった日本からの移住者が多い地域では、そのエリアごとでそれなりの規模の文芸祭が行われてきた歴史はあるのですが、世界規模で、日系人のための文芸祭が開催されるのは今回が初めてとなります。
 大会は、JICA横浜国際センターで今年の十月三十一日に開催されます。同センターには海外移住資料館も設置されており、文芸祭の作品集は、永く資料館で保存されることとなります。短歌・俳句は、優れた個人史のみならず、海外日系人の得難い生活の記録でもあります。一世、二世の高齢化が進む中で日系日本語文化は変革期にありますが、今回の文芸祭を通じて、日系人の文学・文化が日本国内で広く理解され、顕彰されてゆくことを願っています。今回の大会の特徴は、海外の作者のみならず、国際交流の見地から、日本からも作品を募っていることです。ぜひ、日本のお知り合いの方にも声をかけていただき、大きな大会に盛り上げていただきたいと思います。皆様の御参加をお待ちしております。
 
 小塩卓哉(おしおたくや)
 一九六〇年岐阜県生まれ。「音」短歌会運営編集委員、日本文芸家協会会員。著書に、海外日系移住者の短歌作品を調査研究した評論集『海越えてなお 移住者たちが短歌に綴った二十世紀』(本阿弥書店刊)、歌集『樹皮』などがある。