なるほどな――思わず、頷いた。パラナ州日本移民史料館にある「農家成功双六」を目にしたときのことだ。
全二十五コマに「開拓」「植付」など勤労の貴さを語る言葉だけでなく、各コマに「豊年に巾着の紐をしめ」などと戒めの一文も添えられる。ジャポネス・ガランチードとして高い評価を受けるに至った背景には、日常からの道徳教育があったのだと痛感した。
物質的には恵まれない開拓初期ながら、こうした双六などで遊んだ子供たちの心は豊かで暖かかったに違いない。
一方、日本の状況はどうか。小学生が校内で同級生を殺害するなど救いようのない事件が耳目を集める。テレビゲームやパソコンなど科学的には優れるが、精神性に乏しい娯楽に慣れた世代が増えている。全てに満ち足りた現代日本だが、本当の幸せを知らないのではないだろうか。 (記)
04/07/09