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亜国の輸入制限容認へ=家電製品が対象に=メルコスル、事実上の崩壊?=過去9年間はブラジルの赤字

7月14日(水)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】ブラジル政府は十二日、アルゼンチンのキルチネル大統領の要請を受けて、亜国向け家電製品の輸入制限を容認する意向を示した。亜国工業連盟(UIA)は、ブラジル製品の輸出大攻勢で家電製造業界が存亡の危機にあるとして保護措置を亜国大統領へ陳情していた。UIAの要求は五年の期限で、一年間コンロが六万台、同国の市場シェアで二〇%。冷蔵庫が十六万台で三五%、洗濯機が六万六千台で二五%としている。

 ブラジル製家電製品の輸出攻勢は、同国市場への侵略であり制覇だとして亜国の同業界が存亡の危機にあると、UIAは亜大統領に訴えた。ブラジル側代表企業のエレトロ社は自主規制として、レンジ十万、冷蔵庫三十一万、洗濯機十九万一千まで譲歩したが妥結できなかった。
 亜国はUIAの判断により輸入枠を毎年見直すと、理不尽な要求をブラジルに対して行った。ブラジルは十五日に産業開発省の次官を中心に業界代表者らを亜国に送り、「冷蔵庫戦争」を繰り広げる。UIAはブラジル側の攻勢が、亜国の家電製品製造メーカー十七社を閉業の止むなきに至らしめる死活問題を生み出しているとした。
 亜国企業の姿勢に負け犬のムードは否めないとブラジル業界はみている。亜国の経済危機以前の輸入実績と比較すると現状ははるかに低水準であり、経済回復は萌芽がようやく見え始めたところ。往年の栄光は、すっかり影を落とした。
 亜国は欲求不満を露骨に表しているが、メルコスル市場を中心に見ると大きな恩恵を受けている。過去九年間の伯亜間の貿易収支は、ブラジルが百四億ドルの赤字となっている。それでも一方的に対伯貿易障壁を設けるなら、メルコスル共同体の意義がなくなる。
 ルーベンス・バルボーザ駐米元大使は、メルコスルのアスンシォン合意の見直しを提案した。同合意は司法制度や教育、環境、人的交流で進歩があったが、関税協定では退歩のみとした。対亜関係は譲歩を重ねても亜国に競争力も潜在力もなく、輸出の自主規制では解決にならないという。
 メルコスルは事実上、全盛期は終わった。亜国は時代の趨勢に取り残された。国際市場への参入が益々困難を極める中、亜国のような甘えは許されない時代にある。ブラジルは亜国に引導を渡し、米国と中国へ目を向けるべきだと、同元大使は提言した。
 貿易局のムギナイニ長官は、ここにきて発生した伯亜間の貿易摩擦は事実上のメルコスル崩壊とみてよいという。ブラジルは、メルコスルを通商交渉の切り札と考えていた。足元で内輪揉めが止まないなら、メルコスルの将来は期待できないと述べた。
 全国農業連盟(CNA)のジウマン・V・ロドリゲス会長はメルコスルは過去八年間、起伏が激しかったと述べた。原因は共同市場の成立当時、加盟国の関係は良好で将来の摩擦など想像もしなかったから、協定内容が曖昧であったためという。協定条項は、各国が自国の都合本位に解釈したと指摘。同会長は両国が相互扶助関係にあり、協定の厳密な見直しを求めている。