7月14日(水)
【ヴェージャ誌】駐伯前米大使ドンナ・リナック女史は、二十五日をもって定年で退官した。滞伯中はルーラ大統領やカルドーゾ前大統領のため伯米首脳会談のお膳立てを行った。余生は、マイアミで南米関係のロビーを扱うコンサルタントとして活躍する。
ブラジルとイラク紛争、FTAA(米州自由貿易圏)について、同女史の考えを語ってもらった。
【外交官として最後のご奉公になったブラジルへの思いは】ブラジルは軍政の末期に着任以来二十年滞在したが、誰にも愛着が持てる国だと思う。〇二年の大統領選は、当地に民主主義が根付いたことを示した。典型的なエネルギッシュな国なので、民間企業の将来に期待する。
【滞在期間の総決算は】伯米間は通商関係だけでなく、文化面での親密な交流も進めることが私の抱負であった。米国で開発した農業技術をブラジルへ導入し、若いブラジルの外交官に米国でのホームスティを斡旋して国際感覚を磨いた。
【左翼政権と米外交の関係は】歯に衣を着せぬ現実主義はよい。前政権以来、ブラジル外交は対外布石に意欲的だが、ハイチ派兵は称賛に値する。ベネズエラでもルーラ大統領の音頭取りは、米政府のそれより効果的だ。伯米両国は現実的には、利害が一致する。
【南米の反米主義は】文化の表現が違うだけ。ある国によっては、年中行事になっていて内容はない。ブラジルの反米主義は、面があるだけで深さがない。
【イラク紛争で損なった対米感情は、修復できるか】修復は簡単。米国が過失を認めればよいのだ。
【米外交の姿勢は一方的だが】パイオニア精神の結果だが、他国の不快感を無視しての振る舞いは行き過ぎ。しかしイラクへの武力介入は一方的ではなく、同盟軍の介入だ。世界が抱える問題解決に、もっと多数の国々が参加すべき。
【米国は帝国主義の国か】帝国主義は、他国に主義を押し付け支配下に置くもの。世界に中央集権体制を敷いて、米国が支配するのは非現実的で不可能なこと。
【FTAA(米州自由貿易圏)は〇五年の期限が迫ったが、締結は可能か】残すとこ数カ月だが、双方とも消極的。締結の可否は、伯米両国にかかるため両国の責任は大きい。中米にはFTAAのメリットが及ばない国もあり、大国の利害だけで判断はできないことを考慮すべきだ。
【最大の難関、農業補助金について】日欧を除いて、米国だけが農業補助金を廃止できない。全先進国が、同時に廃止すべき世界規模の戦略的問題だ。
【日本とEUは、FTAAに関係はないが】農業補助金問題は、世界貿易機関(WTO)で解決するしかないだろう。この問題で対日欧は、対米ほど摩擦がない。米国は日欧よりも開かれた市場で米国が抱える貿易赤字は、ブラジル経済に貢献していることを考慮に入れるべきだ。
【ルーラ大統領とブッシュ大統領の会談に二回、出席した感想は】両大統領とも現実的で単刀直入、同盟、信念、酒、大衆を引きつける力などで共通点がある。昼食のとき両国の黒人がテーマになり、二人は意気投合していた。
【NYT記者の追放問題は、どう思うか】一国の元首に対する表現として記事は失礼だが、大統領の態度としては行き過ぎ。
【ボーイ・フレンドは、ブラジルに残して置くか】コンサルタント事務所は、マイアミとサンパウロに開くからひんぱんに会う。二十年の交際だから、二人はしっかり結ばれている。
【ブラジルの男性は】男性論は趣味ではない。男性は人柄と経歴次第。