7月15日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙十四日】サンパウロ州内で誘拐が急増している。警察当局の発表によると、被害者を拉致し監禁した上で、家族に身代金を要求する営利誘拐が月平均八件の割合で頻発している。被害はサンパウロ市内が最も多く、カンピーナス市も誘拐犯が暗躍する場所として挙げられている。このほか最近とみに増えている稲妻誘拐(セクエストロ・レランパゴ)については実態がつかめていない。
当局の発表によると、本年に入ってから被害届けが出された営利誘拐は五十一件で月平均八件。一月―三月は二十二件、四月―六月は二十九件で、この三か月間で前期の三一・八%増となった。この二十九件のうちサンパウロ市内での発生が最も多く、十八件となっている(一月―三月のサンパウロ市内での被害は十四件)。このほか市郊外で八件、サンパウロ市圏で三件だった。
カンピーナス市も発生率が高く、本年に入りすでに十一件発生、昨年の十三件に対し六月現在までに八〇%を達成(?)したことになる。同市はサンパウロ州内の麻薬組織の拠点と当局がにらんでいることもあり、麻薬犯罪にからんだ誘拐も多発していると見られている。当局はこれまでに誘拐犯四十三人を逮捕し、監禁場所十三カ所を突きとめている。これまでの調べによると、単独犯もしくは少数グループの犯罪は少なく、大半は麻薬組織が資金集めのために行うため検挙率が低く、監禁場所も複数用意してあることから捜査が困難になっている。
年金生活者のアントネリさん(七六)はサンパウロ市ラッパ区の自宅付近をジョキングしていた時、車で乗りつけた六人組に武器をつけられ拉致された。その後家族のもとに身代金三十万レアルの要求があったが、家族は七百レアルしか用意できないと返事をしたという。犯人はあきらめたのかオザスコ市で十二日夜、アントネリさんを一週間ぶりに解放した。
アントネリさんの身なりが立派だったことから犯人は人違い誘拐をした模様。凶悪犯罪が頻発している昨今、警察は今回のケースを「奇跡の生還」としている。
またサンパウロ市ビラ・ギリェルメ区では三人の誘拐犯が被害者を自家用車ごと拉致したが、警官に追跡されて撃ち合いとなった。警官は投降を促したが、犯人らは「生きていても仕方ない」と言いつつ抵抗した。あげくの果て警官の銃弾で三人とも死亡した。