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「予防に最も尽力した国」=エイズ問題=国連、ブラジル政府を評価=14万人が国費で治療を受ける=患者実数は60万から65万人

7月16日(金)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙七日】一九八〇年代から世界で猛威をふるってきたエイズは、衰えを見せる気配もなく感染拡大に歯止めがかかっていない。国連エイズ合同計画(UNAIDS)によると、昨年はこれまでで最も新規感染者が多く、世界中で四百八十万人が新たに感染したと推定している。このように、エイズ対策が講じられていないと指摘される中、UNAIDSは「予防に最も尽力した国」の一つにブラジルを名指し、その効果を高く評価している。一方ブラジル政府は、北東部地方の住民のエイズの認識が低いことから、今後この地方の住民を重点に置いて予防の徹底を図るとの態度を明らかにしている。

 国連エイズ合同計画(UNAIDS)は六日、二年に一度の世界エイズ報告を発表、調査対象国となった世界百九十一カ国の中で最も予防の効果を上げた国の一つとしてブラジルを挙げた。同発表によると、ブラジルは学校教育やテレビなどのマスコミを通じてエイズの認識を広く知らしめるのと同時に、性交用の衛生器具やエイズ治療薬の無料配布を行ってきた。さらに保健省は全国にキャンペーンを張って公的医療機関で、エイズウィルス(HIV)の無料検査を実施。この際、個人の秘密を完全に保守したことが成功の要因となった。UNAIDSの報告はエイズの実態を知るためには個人の検査が不可欠だとし、ブラジルのやり方を世界各国が見習うべきだと特筆している。さらに国家予算から治療費の支給を受けている感染者は全世界でわずか四十万人だが(推定六百万人が治療を必要としている)、そのうち十四万人がブラジル国民だという。
 ブラジル政府当局によると、一九九六年から二〇〇二年までにエイズ対策として二十億ドルが拠出され、本年は七億レアルの予算が計上された。一九八〇年以降感染者は三十一万人余となっているが、実数は六十万人から六十五万人とみられている。死亡者は年間一万一千人から一万二千人と、世界水準よりはるかに少ない。
 同報告によると〇三年に全世界のエイズ感染者数は三千七百八十万人で推定死亡者数は二百九十万人、新たな感染者の数は昨年、四百八十万人となっている。この中で女性および若者の感染者の急増が指摘されている。十五才から四十九才までの患者が三千五百七十万人で、このうち女性は四七%強を占める。また両親がエイズで死亡した「エイズ孤児」が千五百万人いるとされ、その八〇%がアフリカ大陸の子どもだという。
 世界人口の六割を占めるアジア大陸では新規感染者が百十万人に上り、中でも現在感染者数が五百十万人と推定されるインド(アフリカに次ぐ世界第二位の感染国)で新規感染者の増加が最も顕著である。感染ルートはセックス。東ヨーロッパではロシアが八十六万人と台頭してきており、女性も増えている。アフリカ大陸は感染者数が二千五百万人で、このうち女性と男性の比率は四対一だという。
 エイズ対策資金は全世界で九六年に三億ドルだったが、昨年は五十億ドルが費やされた。来年は七十億ドル、〇七年には二百億ドルが必要とされている。このうちの半分は発展途上国に向けられる。これらの国では治療が受けられない感染者が六百万人いると推定され、来年末までに少なくとも半数以上に投薬治療の実施が望まれている。ただ資金の流れが、その国の官僚主義や汚職に阻まれて末端まで行きつかないケースが多々あり、さらに医療施設の改善(貧困国では手術用の手袋も不足している)など、エイズ予防や治療「以前の問題」が横たわっている。