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誰のせい?寂しい歓迎会=「コロニア総出」今は昔=共催団体代表姿を見せず

7月17日(土)

  十五日、サントスに入港した海上自衛隊練習艦「かしま」の歓迎会が十六日昼、文協であり、東郷行紀司令官ら百八十一人の乗員が列席した。日本の練習艦がサントスに寄港するのは六年ぶり九回目。東郷司令官はあいさつで、「いつもわたしたちを温かく迎えてくれて有り難い。(時代が移っても)それだけは変らない」などと感謝の意を述べた。しかし、会場の大講堂に用意された一般席は約半分しか埋まっておらず、共催した日系二十八団体の代表をほとんど見かけない始末。歓迎される側である乗員の姿ばかりが目立つという「お寒い」失態を演じた。歓迎会はきょう十七日午前十一時半からも、林宏之艦長を含む残りの乗員を迎え、同講堂で開催される。この日、出席していた移住者は「六年ぶりの入港。いくら一世が激減しているといってもこれではあまりにも寂しい……」と、来場をうながす。
 ブラジルの日系コロニアが熱狂的な態度をもって日本の海上自衛隊員を歓迎したのも今は昔――。古老男性は声を落とす。恒例だった歓迎委員会も今回は組織されず、「全員集合」の大号令はついぞかかることなかった。広報不足は否めない。普段のカラオケ大会や歌謡ショーだったら、満員になる大講堂もこの日ばかりは閑散としていた。
 過去、歓迎委員会の指導的立場にあったサンパウロ総領事館の佐藤宗一首席領事は、「艦上レセプションの方だけにタッチして、歓迎会は日系団体に任せる形となった。次は百周年の際に寄港する可能性がある。反省材料としたい」。
 建物正面に歓迎の垂れ幕ひとつ掲げることなかった文協の大講堂で、凛々しい制服姿の乗員たちが毅然として座している。その表情には「海外最大の日系社会」、その総本山に「日本国自衛隊」を代表してやって来たという熱い想いがにじんでみられた。
 これを目の当たりにした文協の上原幸啓会長は「皆様の勇姿に接することが出来たのはまことに嬉しい」と祝辞。
 続く、サンパウロ総領事館の石田仁宏総領事は、「コロニア総出」の歓迎を予想していたかのように、「いつも盛大に日系団体に歓迎して頂いて厚く御礼を言いたい。(日系社会の)気持ちを汲み、いつまでも思い出にとどめていただければ幸い」などと、用意してきた文章を読み上げた。
 隊員による「海行かば」の合唱では、隊員の多くが歌詞を見ながら歌っていた。その理由について東郷司令官は答礼で、「三年前に内容が改訂されたため。『男と生まれ海を行く』の部分が、最近女性隊員が増えたことを受け、変わりしまして」と苦笑い。列席していた七人の女性隊員を起立させ紹介した。
 さらに、東郷司令官は約百年に来伯した笠戸丸移住者の苦労を偲び、「わたしたちもこれまで約三ヵ月の航海で、(日本とブラジルの)距離を身をもって感じている。敬意を表します」などと述べた。
 記念品の交換では、パラチを描いた水彩画が日系団体から東郷司令官に、上原会長には海上自衛隊からガラスの盾が贈られた。歓迎会の最後で、音楽隊の演奏が十五分間ほどあり、特に「軍艦マーチ」の箇所で盛んに拍手が送られていた。