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一本の棒で感動生む競技=バトントワリングブラジル代表の簾田監督に聞く=大阪・世界大会に出場へ

7月21日(水)

  八月六日から八日まで大阪市中央体育館で開催される第二十五回世界バトントワリング選手権大会にブラジル代表チームも参加する。ブラジルチームは九九年に世界バトントワリング連合に加盟、〇二年にソロ・ペアで世界選手権大会に初参加を果たしたばかり。団体出場はこれが初めてとなる。代表監督の簾田武志さん(26、みすだ・たけし)に大会にかける思いを聞いた。

 「一本の棒で人に感動を与えるのは難しい事です。でも、それを可能にするのがバトンです」と簾田さんはその魅力を語る。
 バトントワリングは、アメリカで発祥、カナダ、欧州、日本の順に普及していった。ブラジルに導入されたのはここ数年のこと。そのため、知名度が低くスポンサーもついていないなど、代表チームの環境は決して恵まれているとは言えない状況だ。
 「〇一年に指導者として来たときは小学生レベルでした」と簾田さん。「でも、三年間でここまでできるんだぞ、というのを見せつけ世界を驚かせたい」。
 簾田さんはブラジル生まれ。生後八カ月で日本に帰り、二歳から愛知県一宮市でバトンを習い始めた。名門PL学園で中学、高校と鍛えられ、世界選手権大会で二度銅メダルを獲得。早稲田大学教育学部に入学してからは、九七、九八年の二年連続で金メダルを獲得したトップ選手。大学卒業と同時に生まれ故郷に戻ってきた。
 ブラジルで育てた選手を自国日本へ送る―。これは、「コーチへの恩返しでもあります」。毎日厳しい練習が続いた中学、高校では「うまくできるまで飯は食わさん」とコーチの怒声が体育館に響き渡った。
 「でも、これで自分に厳しくするのを覚えることが出来た。教え子が、選手を連れて帰ってくればコーチも嬉しいはずです」
 ブラジル行きの話が持ちかけられた時、簾田さんはすでに大手企業への就職が決まっていたという。しかし、バトントワリングへの情熱が捨て切れず、愛知県に住む両親に相談したところ「行きなさい」と背中を押してくれた。
 ブラジル代表チームは十四歳から十八歳までの十二人。「世界でも、平均年齢がかなり若い方」だ。ハツラツとした演技で入賞に期待がかかる。
 「でも、結果は、結果として神様のプレゼントと思って受け止めますよ。それよりも選手たちがいろいろなものを見て、聞いて、学んでくれたら嬉しいです」。日本では日本の代表チームとの交流や、劇団四季のミュージカルを鑑賞する予定も組んでいる。
 簾田さんのいまの願いは、バトントワリングの存在をもっと有名にしていくことだ。
 「オリンピック競技にでもなれば、子供たちは出場を目指す。それは、夢を与えることになる」。
 大会決勝のチケットはもう既に完売。代表団は、きょう二十一日日本へ向け出発し、八月十八日に帰国する。