7月22日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日既報関連】ジョアン・P・クーニャ下院議長を始め、社会保障制度改革、税制改革の上程者、連立与党幹部、財界などの圧力により政府は二十日、社会保障負担金の二〇%から二〇・六%への増率を一年間延期することに決定した。ルーラ大統領は連立与党の党首に打診したところ、大部分が増率に反対であった。しかし、政府は譲歩したものの断念したわけではないので、それなりの代償を求めるとみられている。
年金調整に必要な財源捻出の模索は一年間の保留となり、パロッシ財務相の初黒星となった。年金調整は、九四年二月から九七年三月の年金調整が最低賃金の調整に準じるべきとした裁判所の判決により、百二十三億レアルの年金補填が発生した。
社会保障負担金の増額は、ようやく兆候の見え始めた経済回復の矢先、致命傷になると大統領も憂慮している。しかも地方選を控えたこの時期は、とどめを差しかねないと懸念。財務相も同増額案が、引き起こした混乱の収拾に奔走した。
下院議長は全国工業連盟(CNI)の要請を受けて、同増額案の実施を〇五年から〇六年に延期する方向で調整に入った。給与に対する増額にせよ、売上高に対する増税にせよ、CNIは同案の一年間の延期を求めた。
混乱の火元となったランド社会保障相は、負担金増額発言を見解の相違だと苦しい弁解をした。最終決着は大統領の采配で決まり、現時点では断念でも譲歩でもないという。
年金調整分の財源捻出は、財政責任法(LRF)を適用して〇五年から企業の売上高から二・五%を徴収する案もある。税収が記録的な増収となったことで、七億レアルの資金捻出が可能となった。少額で勝訴した年金者の支払いから応じれば、〇四年は取り敢えず時間が稼げるとみられる。
検討段階での発言は軽率であると、社会保障院がそしりを受けている。同院は出入りの労組幹部が、口外したものと責任を転嫁した。州知事らは、年度予算の編成で資金の捻出は可能なはずだとしている。
税制改革案に盛られた給与明細の改正や資本財を対象とする工業税(IPI)の減税、長期投資への減税なども一年の実施延期となり、すでに公表済みの諸減税案は、絞り込まれる見込みとなった。税制改革は当初の期待よりも、収穫は小さくなった。税収増の記録更新も、長期的に期待はできないとみる。
年金組合のジョアン・B・イノセンチーニ理事長は、政府が負担金増額を断念するとは信じられないと述べた。政治の責任を企業に負わせることをめぐる論争はまだ尽きないようだ。年金者の訴訟は十カ月間に及び、百八十万の当事者が成り行きを見守っている。
同理事長は、財源即増税というのが政府の安易な考え方で、努力も工夫もない政策にいらだっている。年金の未調整によって生じたはずの剰余金は、INSS横領や背任行為で消えたと同理事長はみている。