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女性の立場からみた移民史=掘り起こし書籍で残そうと計画=すでに著者選び執筆指導=有志主婦ら6人=日語セの日下野副理事長

7月24日(土)

  出産、育児、料理…。海外の慣れない生活の中で、移民の妻は苦労も多かったはずだ。フリー・ジャーナリストの日下野良武さん(60、熊本県出身、ブラジル日本語センター副理事長)が女性の立場からみた移民史を掘り起こし、書籍として残そうと企画。三十五歳から八十歳までの有志六人がそれぞれ、四百字詰め原稿用紙百枚の自分史執筆に挑んでいる。NHKが撮影中のドラマ「ハルとナツ」の放送(〇五年十月)に合わせて刊行する予定。日下野さんは「女性は移民史において重要な役割を果たした。見えない部分での貢献があったと思う」と出版意図を説明。本人の意欲、文章力の有無など条件次第では、さらに寄稿文を受け付ける考えだ。
 発想の原点は、熊本市内に在住する自身の母親(91)にある。「幼い頃、母親はよく部屋の隅で冷や飯を食っていました。自分は残りものでも、家族には温かいご飯を食べさせたいという心遣いがあったんだと思う」
 内助の功を尽くして、一家を支えた母親。その姿はそのまま移民の女たちにも通じた。「奥地での出産なんて、生死をかけたものだったと思う」。言葉や生活習慣の異なるブラジルで、女性はどう生き抜いてきたのか──。
 救済会創立者の故渡辺マルガリーダさんのように、個人の成功物語として女性が主人公になることはあっても、一般の女性が日本で作品を発表する機会が多いとは言えない。
 「男なのにどうして、という声もあるかもしれない。記事の配信や講演活動で、日本のマスコミと関係を持つ私が、コロニアに貢献できることだと考えました」
 書き手は三十代~八十代で教師が二人、日系団体の職員が二人、主婦が二人。三十年間アマゾンの中で電気のない生活をした人、子供を事故で失った人など個人の体験も様々だ。
 月に一回、会議を開いて書き方などを指導している。「ただ辛かったといっても、相手には伝わらない。一つ一つのことを具体的に綴ってほしいと口をすっぱくして言っています」 執筆者の一人は「私は経済的に行き詰まって、日本から逃げてきました。結構波乱に満ちた人生を送ってきました。その一部でも日本の人に知ってもらいたい」と意欲を見せている。
 「ハルとナツ」の主人公が姉妹であることから、放送に合わせて出版したい考えだ。日下野さんは「バラティーに富んだ内容なら、追加しても構わない」と話し、まだ希望者を受け付けている。問い合わせ電話番号=11・5579・6691(日下野=くさかの=まで)。