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中銀理事、脱税疑惑で辞任=総裁も告発受ける=一理事葬り、市場混乱回避=大統領、形相を変える

7月30日(金)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】中央銀行の通貨政策委員会(COPOM)委員のルイス・A・カンジオッタ理事は二十八日、資産の海外移転とそれに伴う脱税の告発を受けて職務を辞任した。同告発には、メイレレス中銀総裁も連座している。資産の海外移転は二度にわたり、申告洩れが指摘されている。前理事は告発を根拠のないものとして反発、マスコミの無責任な報道との声明を発表した。中銀総裁は、辞任を表明しなかった。

 メイレレス中銀総裁とカンジオッタ理事の脱税告発後、五日が経過したが政府は何ら弁明を行わなかった。カーボ・ヴェルデ共和国に滞在中のルーラ大統領は、中銀総裁が本人の良心に従い出処進退を決めるとした。前理事の後任には、総裁の推薦でフリート・ボストン銀行から抜擢したロドリゴ・R・アゼヴェード氏が八月一日付けで就任する。
 辞任した前理事は申し開きが政府の容認を得られなかったことで、金融市場の混乱回避のためにも辞任が賢明と決意した。脱税告発に対してはMTB銀行ニューヨーク支店に該当の資産はないと、事実無根を訴えた抗告書を検察庁や元パラナ州銀CPI(議会調査委員会)、法務省、連邦警察に前理事は提出した。
 政府は中銀首脳部を標的とした揺さぶりに、一理事を葬ることで危機乗り切りを図ったようだ。中銀総裁について大統領は、これまで政府の要望に応え、ブラジル経済の総司令官として信頼できる人物とした。中銀の役割については、何の変更もないことを確約した。
 アレンカール臨時大統領は、事実の有無は本人自身が知っていると、メイレレス中銀総裁への脱税疑惑の矛先をかわした。PT首脳部は、大統領が中銀総裁への脱税疑惑で形相を変えたともらした。しかし、中銀総裁が辞任に至った場合、政府が受けるマイナス要因が大きいことで、臭いものに蓋をする動きが政府内にあるとみられる。
 金融市場の動揺を避けるため、パロッシ財務相は現路線を踏襲する後任人事を行った。二十八日の後任人事発表で、中銀総裁が脱税疑惑について、自分は告発の対象ではないと否認した。辞任の可能性を問われた質問で、前理事の辞任は個人的判断であり、総裁の辞任とは混同しないように、記者団に注意した。
 一方、上院の野党上議はカンジオッタ前理事の辞任だけでは不十分として、事実の解明を求めている。ヴィルジリオ上議(PSDB)は、メイレレス中銀総裁が所得税の申告書を修正した背景の説明を求めた。政府高官への声がかかると身辺の掃除を行うのが通例だが、同総裁はレアル通貨の番人であり身の潔白を証明する必要があるという。
 同上議は、理事の入れ替え位の小細工では納得しないという。河を渡る盗賊を救うため牛を一匹、ピラーニャ(肉食魚)に御馳走したとみている。資産の海外移転疑惑のある政府高官を、俎上に上げるよう同上議は求めた。上院CPIのバーロス委員長(PSDB)は、大統領命令による中銀総裁の解任を要求した。