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サンパウロ州=バナナ王国に危機迫る=シガトカ病がまん延=媒介虫駆除費用の捻出困難=州と政府に緊急援助要請

7月30日(金)

  【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】バナナ生産で世界第三位を誇るブラジルだが、その国内第一の生産地サンパウロ州バーレ・ド・リベイラ地区が危機に直面している。シガトカと呼ばれる病害がすでに同地区にまん延し始めており、放置するとバナナ全滅の事態にまで発展するため、地元では対策に追われている。この地区は国内でも貧困地区のトップにランクされ、バナナ栽培および関連労働者が人口の九〇%を占めるためバナナ生産が停止することは地域存亡の危機ともなる。広大な地域のため、空中からの殺虫剤撒布が唯一の手段だが、経費が負担できない農家が多く、市当局ではサンパウロ州と連邦政府に緊急援助を仰いでいる。

 ブラジルのバナナ生産はインド、エクアドルに次いで世界第三位となっており、アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、イギリスなどに輸出されている。国内の果物収穫量はオレンジに次いで第二位となっており、消費は一人当たり年間二十五キロと多い。その中でバーレ・ド・リベイラ地区は昨年百十万トンのバナナを産出した。他地域の全生産量五百九十万トンからみても国内最大だ。同地区での農産物生産による収入三億四千四百万レアルのうち二億七千七百万レアルがバナナで占められている。住民の九〇%は何らかの形でバナナ産業に関わっていることから、まさにバナナ王国といえる。
 ここにバナナの大敵といわれるシガトカ病がまん延しはじめた。病害を媒介する害虫は一日に五十キロ飛ぶと言われ、神出鬼没と恐れられている。病害にかかると葉が枯れはじめ、やがて実がしぼんでいく。同地区では約一ヵ月の間にまん延したとみられている。通常殺虫剤撒布は五~六回だが、この病害は十八回から六十回は必要との事、しかも空中撒布が必要で、費用がヘクタール当たり七十レアルかかることから小農には手が出ないのが現状だ。コストの七〇%が駆除費用で、これを三倍にするのは採算が合わないと農家は話している。
 同地方で病害が確認されたため、リオ州とパラナ州では同地方産のバナナの搬入を禁止した。さらに収穫が激減したことで市場からバナナが消え値段も高騰している。
 この危機を打開するため、同地方の市長をはじめとする関係者が緊急会議を開き、州政府へは駆除や新種改良などの対策を要請し、連邦政府には特別緊急融資を申し出ることを決議した。この病害はこつ然と発生するるもので、ここでもいずれ起こることが予想されていたにもかかわらず無防備だったと出席者から批判の声が挙がった。ブラジルでは一九九八年二月にアマゾンのマナウス市が被害にあい、一割が立ち枯れになった。現在でも北東部地方やマット・グロッソ州で病害が発生するという。