8月3日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】ジュネーヴで開催された世界貿易機関(WTO)閣僚会議に出席したセウソ・アモリン外相は三十一日、農産物補助金制度の見直しを行うことで各国が基本合意に達し、同問題が廃止の方向へ動き出したとして交渉の努力を評価した。世界銀行(IBRD)は、基本合意は途上国連合Gー20の奮闘による結果で、今後に有利な展開が期待されるとした。欧米先進国は、補助金廃止の代償を検討中。
WTO加盟国は三十一日、〇一年ドーハWTO会議で決議した農産物補助金の見直しを再検討することで合意した。ドーハ決議は海外市場に限らず国内市場でも農産物補助金制度を廃止するというブラジル案が、カンクン閣僚会議で曖昧にされ棚上げされていた。
今回は見直し決議に、同案も明記された。農産物補助金問題はカンクン会議で途上国案が空文化されたが、十カ月間にわたる苦闘の末ようやく日の目を見た。
外相は決議発表前に、感極まってルーラ大統領に首尾を報告した。合意決議の正式発表前にあるが補助金削減の方向で近日、先進各国は前向きに動き出すと外相は強気発言をした。引き続き外国へ輸出される農産物に掛けられる補助金についても、廃止交渉を行う考えだ。
しかし、現実は補助金の増額を抑えるだけで、廃止の見返りに市場開放などで過大な代償要求があるという見方もある。カンクン会議で脱線した列車を再度、軌道に乗せただけとする消極論もあるようだ。
G-20が輸出農産物の補助金を廃止する交渉に日付設定で詰め寄る一方、EUは輸出商社への融資制限を米政府へ要求した。
ブラジル代表団は、〇五年から欧米先進国の国内市場向け農産物に対する補助金の二〇%削減を要求して内諾を得た。しかし、先進国側は単なる政治取引と見なしているようだ。補助金制度の仕組みを変更することでお茶を濁し、生産者への補助金は従前通り続行する考えらしい。
さらに農産物補助金の総額上限を国内総生産(GDP)の五%以下とした。EUの場合、五%は百億ドルとなる。しかし、名目を変えた偽装補助金が誕生する可能性もある。
IBRDやブラジル外務省の楽観的観測の反面で、EUは合意が各国の農業政策に干渉しないことを条件にしている。それにしてもIBRDは、途上国には先進国の急所へ一撃を加えたことで利があるという。外相はブラジルの農業分野への投資が、内外から急増すると予想している。
補助金廃止の交渉が、俎上に乗ることで今後激しいやり取りが予測される。G-20は、七年以内の段階的廃止を提案する。米政府は、五年の腹案があるらしい。EUは、まだ難色を示している。いずれにしてもG-20が、交渉の主役であることに変わりはないとIBRDはみている。
多数の餓死者を出している世界情勢を鑑み、G-20の言い分が理に適っているという見方が強い。日欧米先進国の我がままは、いつまでも通用する筈がないという見方が支配的だ。