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三重県人=初期移民探して証明書を=若狭丸と帝国丸の19家族

8月4日(水)

  三重県出身の初期移住家族を探し出し、サンパウロ州政府が発行する家長の移住証明書をその家族や遺族に渡す事業を三重県人文化援護協会(石橋通之進会長)が始めた。初期移民の家族の現状を調査する目的で行っており、現在二家族の関係者が名乗りを上げている。
 対象となるのは、一九一三年サントス入港の若狭丸と、一九一四年の帝国丸に乗船していた十九家族。
 七月一日付け本紙ポ語欄で、この件を報じる記事を読んだ前川やすぞさんの息子の恭平さん(92)と、玉置佐吉さんの孫がさっそく名乗りをあげた。
 恭平さんから、同協会のへ連絡が入ったのは七月半ば。「新聞に名前が載っていたのでとても驚きました。もう、読み上げたらうれしくて近所中に回しましたよ」と紙面で名前を発見したときの興奮を語る。
 やすぞさんは渡伯後すぐに病気で亡くなった。一九一五十一月一日―まだ、恭平さんが三歳の時だ。
 恭平さんには、一つだけ父親の思い出がある。「畑で仕事をしている時に汽車
が通ったんです。私に見せようと、父親は仕事の手を止め、私を抱いて線路の方へ走りました」。着いた頃にはもう姿は見えず、汽笛だけが響いていた。
 紙面を見て、とっさに父の面影が頭をよぎり遺影を眺めた。「長生きしたことで、このようなことが経験できてよかった」と、恭平さんは今回の出来事を感慨深げに振り返った。
 この活動を始めたのは同協会の佐野かずしさん。両親が同県出身で、一九一八年に渡伯していることから「自分の父親が最初の三重県移民なのではないか」と思い興味を持ったことが活動のきっかけだった。しかし、サンパウロ州立移民記念館で調べた結果、自分の父より五年早くブラジルに着いていた若狭丸の存在を知った。この時に初期移移住者の資料を手に入れたことから、「移民証明書を遺族に渡そう」と思いついた。
 同協会は引き続き初期移住家族とその遺族を探しており、佐野さんは「自分が親戚であるかどうか、はっきりとは分からない人でも、心当たりのある方は是非ご連絡下さい」と呼びかけている。
 証明書の引き渡し式は、十一月七日に開催予定の第二回三重県人会カラオケ大会で行われる。連絡は11・5549・6857(三重県人会館)まで。
■若狭丸■
 一九一三年十月二十八日にサントス港へ入港した「若狭丸」(横浜出港)の同県出身乗船者は以下の通り。()内は移住当時の年齢。▼大石きくまつ(46)、すみ(39)、もと(18)、わさ(16)、ひろ(14)、やし(12)、ため(6)、ひで(3)▼山本せいたろう(25)、とめの(20)、まさえ(13)▼島田げすけ(25)、しか(34)、やたろう(8)、こういち(6)、みち(1)いね、(13)▼中村よさぶろう(40)、たい(32)、くにえ(9)、まさこ(1)、ひきいち(13)▼出崎げんのすけ(24)、きく(29)、いちろ(1)、おとえ(13)▼奥村じぇんきち(33)、ひさの(24)、みよ(5)、ぜんじ(2)、わかの(1)、しょうへい(13)
■帝国丸■
 一九一四年五月十一日サントス港に入港した「帝国丸」(神戸出港)の同県出身乗船者。()内は移住当時の年齢。▼小山きうじろ(25)、しん(18)、とよ(13)▼小山かしち(28)、くの(18)、しめ(養女14)▼浜口じゅんのすけ(36)、ならよ(28)、きみ(養女13)▼小山よそまつ(26)、ひろ(25)、きよ(1)、ちょうきち(弟17)▼中村げんぞ(29)、あさの(27)、かとうげんじろう(弟15)▼前川やすぞ(42)、しん(37)、きょうへい(2)、みつ(養女13)▼野村しげとし(23)、くめ(16)、とあれ(妹18)▼水谷ますじろ(25)、うめ(24)、きよまつ(養子13)▼田辺ふさじ(24)、みつ(19)、よしのぶ(養子13)▼藤田くまきち(28)、うた(24)、つた(養女13)▼玉置佐吉(31)、ひさ(28)、いと(4)、じぇんのすけ(養子13)、つだゆき(姪19)▼奥村ひお吉(45)よね(76)やえ(46)としお(19)けんたろう(16)きりの(13)すずこ(10)れい(6)▼坂倉正吾郎(29)きくえ(25)しょういち(4)しょうきち(1)とるぞ(弟19)