8月6日(金)
【ヴェージャ誌七月二十八日号】ブラジルは世界一を誇る〃税金王国〃だ。専門機関が調査したところによると、ブラジルはGDP(国民総生産)に対する税金の比率が三七%。これに接近しているのがドイツ、カナダだが、この両国は税収を保健、教育、治安に活用しているのに対し、ブラジルは年金支払いと外債の利子支払いに明け暮れるという対照的な実態を示している。過去十年間、政府は赤字財政となる度に税率の上昇や新税の制定を繰り返してきた。常にしわ寄せは企業ひいては国民にはね返ってきた。先週、政府が年金支払いに企業の負担増加を図ったが、関係者および与党内部の反発で見送ったのは希有の出来事とされている。税金王国の国民は貯蓄高で世界平均以下の貧乏所帯でもある。
ブラジルの一般国民が直接税、間接税(食料品などにかかる税金)および本来なら国が負担すべき教育費などを合計すると月収の約六四%から六七%となる。例えば月収二千五百レアルの場合、直接税(給料から引かれる)が五百三十一レアル、間接税(食料品や電話代に含まれている。実際には消費者負担)が三百九十レアル、さらに教育費や保健費および保安対策費が七百四十レアル。(本来なら国や行政機関が負担するべきもの、先進国では実行されている)。これで合計一千六百六十一レアル。何と六六・四%となる。
これにより国民の貯蓄比率はGDPの一八%にとどまっている。このレベルは世界の中でも最低に属している。経済成長を遂げてきた各国のこれまでの平均は最低でも二五%だった。韓国は三八%の高率を呈している。
間接税の中には生活必需品価格の半分を占めているものがある。これが引き下げられると当然物価が下がり、インフレも抑制されることになる。主な税率はフェイジョン一八%、牛肉一八・七%、ミルク一九・二%、マカロン三五・二%、食用油三七・二%、トイレットペーパー四〇・五%、電気代四五・八%、電話代四六・六%、清涼飲料水四七%、ガソリン五三%、ビール(缶)五六%。
ブラジルの税収はGDPの三七%と世界で最も高く、次いでドイツ三六・四%、カナダ三五・二%となっているが、この両国は教育費、保健費、保安対策費を全て国費でまかなっている。これに次いで日本二一%、コスタリカ二〇・三%で、その他メキシコ、韓国、タイ、チリ、インド、ペルーと並ぶがいずれも一〇%台だ。
こうした税金王国ながら政府が予算として自由に計上できるのは五%のみである。残りのうち五六%は公務員および年金生活者への支払い、二八%は外国の借入金の利払いへとすでに行き先が決まっている。これまでの経済低迷は政府の先行投資(無い袖は触れぬでほとんど実行なし)のツケが回った結果といえる。
またブラジルでは税制の変更、新税の設置が朝令暮改といわれる程ひんぱんに行われたため、経理処理が複雑化している。企業で非営業部門が膨れ上がった所以である。トラック部品大手メーカーのスカニアでは計理士、会計士が二十五人もいるが、スイスの本社ではたったの三人のため、本社幹部にその必要性を説明しても理解してもらえないという。
今回、保健省が新たに生じる福祉年金の赤字を補填するために、企業の福祉積立金を二〇%から二〇・六%にする案を国会に上程する寸前に閣議が否決したことについては、従来の常識を破る〃良識の勝利〃と評価する向きが多い。これによりブラジルの税金取り立ては改善の方向へ一歩踏み出した。