8月11日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】メルコスル切り捨て論の急先鋒ジヤネッテ・フォンセッカ教授(IBMEC大)が、成長したブラジルは身の丈に丁度よい服、米州自由貿易圏(FTAA)参入に専心すべきだと提唱した。
頼みの綱とするアルゼンチンは最早、ブラジルの足手まといになりこそすれ同盟国として対応できる状態にないと、隣国へ引導を渡すよう薦めた。以下は同教授のメルコスル論だ。
ブラジルにとってメルコスルは、目的地への飛石の一つ。共同市場を築くためにメルコスルは、最初の踏み石として意義があった。ブラジルは成長の妨げにならない強力なパートナーが必要だが、メルコスルはそのために不十分だ。
メルコスルの問題点は、加盟国に確固としたマクロ政策が不在のこと。最大の問題は、未だに自由貿易体制が構築されていないことだ。本当の共同市場となるためには多くの段階を踏む必要があるが、メルコスルは第一段階で止まったまま進展していない。いつも進展を妨げる問題が、起きて保留の連続だ。
メルコスルが成功する絶好のチャンスは、九〇年代後半にあったが無に帰した。その後ブラジルの為替危機が九九年に、そしてアルゼンチンの経済危機が発生。現在もチャンスといえるが、誰にも意欲がない。
隣国の「冷蔵庫戦争」は表面的な問題であって、もっと真剣に取り組むべきは為替システムの変更。ブラジルは為替変動による影響を最小限に押さえたが、隣国は暴落と暴騰の繰り返しだ。マクロ政策不在の隣国から大企業が、ブラジルへのシフトを検討している。
アルゼンチンはようやく経済危機から脱出したように見えるが、一部分に過ぎない。設備投資は僅少。消費市場は回復したが、工業部門は生産できる状態にない。これでは隣国の経済回復は、線香花火に終わり恒常的な経済復興は望めない。
アルゼンチンの愚行は事実を訴えないで大衆に迎合し、それが民族意識に定着していること。勇気をもって国民を諌める者はいない。このような状態では隣国に投資する気になれないし、工業設備はクズ鉄同然だ。
ブラジルに忠告するなら「触らぬ神に祟りなし」隣国もメルコスルも、手遅れの病人だ。ブラジルが、行く所はFTAAしかない。米国にとってFTAAはオプションだが、ブラジルにとってFTAAはなくてはならないもの。
ブラジルがFTAAに抵抗するのは、第三勢力の結集に意欲を燃やす外務省に原因がありそうだ。覇権主義ではないが、民族主義に根差したイデオロギーが感じられ、現在の世界情勢から見てそれは時代錯誤といえそうだ。