8月14日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】捜査関係者が報道機関に捜査情報を漏洩することを禁じる法案を法務省は作成中だったが、政府や党内からの強い反対に遭ったバストス法相は十二日、同案を棄却することを決意した。同案は報道管制やかん口令の意図のないことを、法相は改めて強調した。ジェノイーノPT党首は要人が告発にさらされても、党が報道の自由に一切干渉しないと声明を発表した。高等裁のヴィジガル裁判長も、同案が報道の自由を制限すると懸念した。
国家公務員法によれば、職務規範に何ら違反することがなければ、全公務員は言論も報道も一切自由であると、PT党首は声明を発表した。しかし、機密情報の守秘は全公務員に義務付けられ、その漏洩に対しては厳罰が規定されている。
国家機関でも党機関でもない、報道関係者からなる独立機関として国家報道審議会(CFJ)の設置を政府が提唱した。
報道規制の発端となったのは、旧パラナ銀行ニューヨーク支店を舞台にした不正送金事件と不正資金洗浄の防止対策だった。不正資金は、世界で二千億ドルが飛び交っている。ブラジル発の不正資金は、その五%に当たる百億ドル。法務省は指をくわえて、この事実を傍観するわけにいかなかった。その手始めが情報漏洩の防止だった。
国際的ネットワークを持つ犯罪組織による違法活動と、それに関与する政府要人や官僚を多数の政府機関が監視している。そのための手掛かりとなるのが銀行口座や資産明細、電話明細、インターネット、携帯電話の会話内容などだ。こうした監視機関には機密情報の共有が必要となっている。
犯罪組織も捜査機関も大規模な国際ネットワークがあり、ブラジル政府も捜査協力を依頼された。ブラジルは、表現や言論の自由などお家の事情を理由に犯罪組織の暗躍を放置するわけに行かないと法相は考える。米政府やEUの要請を受け入れ、国際活動に参加するためには現行の連邦令では不十分だと、法相は法整備を訴えた。
現行法では、盗聴は全て裁判所の許可を要求される。ブラジルの関係諸機関には、盗聴などで得た機密情報を共有・管理できる法的根拠も体制もない。ルーラ大統領から提出された、機密開示に関して適用範囲の拡大を求める暫定令は、最高裁によって拒否される見通しが強くなった。最高裁は、同令が連邦令に抵触するというのだ。
アウキミンサンパウロ州知事は、CFJの設置案を体のいい「情報操作」だと非難した。事実無根の告発で世論操作を行うのは古今東西の通弊で、その取り締まりのために司法機関があると主張した。CFJはかえって報道や言論の自由の妨げになると同知事はみている。
米州報道協会(SIP)はCFJの設置に反対し、大統領府へ書簡を送った。その中で、このような機関の設置は報道に一定の基準を設け、結果としてマスコミを御用新聞化させ、本来の報道活動を歪めると訴えている。