8月17日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】ナショナル製鉄(CSN)やトゥバロン製鉄(CST)などの鉄鋼大手は十四日、二〇〇四年の鉄鋼生産が三千二百四十万トンと過去最高記録を更新する見通しで、さらに驚異的な大量注文の予測に対応するため、〇八年までに七十四億ドルの設備投資を行うと発表した。最近では原料入手難のためフォルクスワーゲンが減産に踏み切り、フォードはトラック製造を一時中断した。世界的な需要増と景気回復による各メーカーの一斉注文には、目を見張るものがある。
鉄鋼業界は、自動車や家電、機械、建設などからの予期せぬ大量注文にあわてている。七月の粗鋼生産は鉄鋼各社フル稼働で二百八十四万トンと過去最高を記録し、〇四年の鉄鋼生産は未曾有の生産高が予想されている。鉄鋼各社に注文が一挙に集中する状況の中、各メーカーは原料入手難で生産調整を余儀なくされている。
鉄鋼各社は大型設備投資に踏み切るようだが、それでも過熱したメーカーの注文には応じ切れない見通し。鉄鋼各社は十月まで注文を受け付けないという。CSNの向こう四カ月の生産は、全て注文済みだ。
フォードは、部品不足のためにトラック部門を定期的に一日操短し従業員を解雇する予定という。トランスミッションを納入する下請けは、原料不足のため完全休止状態にある。
鉄鋼業界は、原料不足はメーカーの生産管理に問題があるとみなしている。消費市場の急速な回復で、注文が一挙に集中した。原料納入の遅滞で、価格調整の支障と混乱をも来した。
ブラジルのメーカーには、欧米のような下請け企業に対する長期納入計画とそれをベースにした長期生産計画がない。国際市場の需給関係で鉄鋼価格に四五%の調整があったことは、自動車業界は知っていたはず。鉄鋼業界の事情がメーカー全般に徹底されていないのも、無計画性の原因と言える。
鉄鋼業界の営業利益は昨年比で四六%増、金額にして八十三億レアルと我が世の春を謳歌した。鉄鋼業全般で純資産は一四・一%増加し、投資資金を仰ぐ余裕ができたといえる。
設備投資予定を七十四億ドルと発表したのは、既存設備による三千四百万トンの年間生産能力を四千四百万トンへ引き上げる考えからだ。この他に、社会経済開発銀行(BNDES)のプロジェクトにある六百万トンの生産も追加される予定。
鉄鋼生産の先行きについては、海外の鉄鋼需要の伸びもあり、しばらく生産が需要に追いつかない見通しだ。国内製造業の需要旋風は凄まじい。冷蔵庫や洗濯機といった白物を始め、携帯式電気製品の需要が激増している。原料高や景気冷え込みのリスクを乗り越えて、業界は失地回復と真剣に取り組んでいる。自動車需要が景気のけん引役になると同時に、原料不足も引き起こしたといえる。
自動車部品組合は、鉄鋼各社が前ぶれもなく一方的に鉄鋼価格の値上げを通告すると不平をもらした。自動車組み立てメーカーは原材料の値上げを末端価格に上乗せしないよう、部品製造業者へしわ寄せるという。