8月18日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十七日】十五カ月かけて司法制度改革を検討してきたバストス法相は十六日、司法官は職務緩慢で司法府は国家機関として機能せず、強者に肩入れをし、不公平な審理を行い、世界でも希有な高給を取っているという結論を発表した。仕事の量は世界水準より少なく、能率は最低であると酷評。議会へ上程される司法制度改革原案を見て、連邦裁や地方裁の判事は猛烈に反発した。司法官らは、原案が途方もない誤解に満ちており、論理性を欠いていると非難した。
法務省は司法府の機能を分析調査し、九十一ページからなる報告書を発表した。内容はかねてから風評があり、おおよそ察せられるものだった。司法府の裁判官は職務特権に守られ、破格の給料を得て国際慣例では考えられない少量のノルマにかまけ、審理の非能率的たるや常軌を逸するものと酷評した。
裁判官の給与指数はカナダの一八〇に次ぐ一四七・八で、世界で二番目の給与水準にある。世界平均は四七・九で、日本は四四・七。ブラジルの裁判官は平均で日本の裁判官の三倍も給与を受給している。
給与指数は世界銀行が用いているもので、それぞれの国の通貨で購買可能な商品やサービスで比較が行われる。最高裁判事の給与一万九千百レアルを基準として、地方高等裁がその九〇%、地方裁がさらに七五%で一万四千レアルとなっている。米国の裁判官は指数で一四五と、ブラジルに顔負けだ。一国の経済力で比較するなら、ブラジルと同クラスのインドの裁判官は一九・九と桁違いだ。
過去の判例を巡り、大統領府と司法府の間で司法改革に向けた論争の火ぶたが切られることになりそうだ。法相は、司法改革を複数段階に分けて行うと述べた。まずは国民と司法府の関係から始まり、次に司法制度のシステムに入る。
司法制度改革の本丸は、連邦令の改正だと法相はいう。議会で論議されることだが、民法と刑法の改正や司法府機構の近代化が焦点となる。すでに司法制度改革は十二年前から議会で平行して審議されてきたが、特に結論を急ぐ司法府の機能マヒとノロノロ審理については、今日まで何ら妙案が出されていないと法相は訴えた。
一方、連邦および州の司法官協会は、政府が国民を扇動して司法府へけしかける策略だと司法改革原案を非難した。政府は検察庁に猿ぐつわをはめ、国家情報審議会(CFJ)なるものを設置して報道管制を行おうとしている。今度は国民をけしかけて、司法府を悪者に仕立てようという作戦だと、同協会が声明を発表した。
司法機関や報道機関に足かせをはめたキューバ方式の民主主義を、ブラジルの模範とするつもりらしいと同協会は政府を非難した。また裁判所が審理を行う訴訟の大部分は、連邦政府や州政府、市庁関係をめぐるものだという。これは政府の官僚が詐欺師のプロであることを意味し、その破廉恥たるや司法官の比ではないと反駁した。