8月18日(水)
今こそ声を上げる時――。日系社会が迎える最大の節目にもかかわらず、記念事業などの具体的進展が見えてこないブラジル日本移民百周年記念祭典協会(上原幸啓理事長)に対し、コロニア御三家の一つブラジル日本都道府県人会連合会(中沢宏一会長)が、公然と疑問の声を上げ始めた。十三日開かれた県連の代表者会議で「資金繰りや記念事業の方針など、祭典協会に納得の行く説明をしてもらいたい」と提案し、承諾された。来週月曜、火曜ぐらいに説明会を実施してもらうよう、同祭典協会に十六日に申し入れた。建設的な議論が期待されている。
同祭典協会に副理事長の肩書きで参加する中沢会長だが、あくまでも日伯総合センターにこだわる協会の姿勢や七十億円にも上る巨額な資金集めが不透明な情勢から、先行きを不安視する。その背景には、まず同総合センターありき、という協会に対する不信感が見え隠れする。
「こんなやり方では、本来出来る計画まで潰れてしまう」。中沢会長の疑問の発端は、七日開かれた同協会の理事会での、渡部和夫顧問の発言だった。
サンタクルース病院代表の横田パウロ氏が現在、事業の優先順位で四番目となる同病院の増改築計画を格上げすることを求めたのに対し、渡部顧問は「これまでに決めた順位がある。これを守らないと式典も出来ない」と一蹴。なお、この〃顧問〃は公式な肩書きではない。
一連のやり取りを見ていた中沢会長は「本来、出来そうな事業はどんどん優先して委員会を作り動き出すべき。実現可能かどうか分からないセンターに固執する協会のあり方はおかしい」と、問題提起することを決心した。
「渡部さんは、祭典協会内で公式な役職を持たないにも関わらず、理事会の議事進行上の重要な場面になると必ず出てくる。このままのやり方を続けるなら、祭典実行委員長など、きちんと責任ある立場に着くべき」と中沢会長は考える。
「こういうことを言うのは覚悟がいるが、今疑問の声を上げないと。センターがダメな時、他の事業までダメになってしまう。余りにも一部の人間だけで事が運んでいる」と中沢会長は協会の体質にあえて疑問を呈す。
十三日に開かれた代表者会議では、中沢会長が各県人会長らに協会の現状を報告。九月中旬に小泉首相が来伯するとの話が持ち上がり、十月末には日系人大会が開かれるという日系社会の「総意」をアピールするには絶好のタイミングにも関わらず、一向に具体性が見えてこないことを危惧。
先日ようやく同センターの土地購入費にあてる一口一万ドルの資金カンパこそ始まったものの、七十億円もの巨額の資金捻出について「計画の実現はどうみても非常に難しい。私は県連の代表として、名を連ねているが非常に心配している」と語った。
個人としての中沢会長は一万ドル寄付に率先して署名しており、計画に対する大きな理解を示した上で、建設的な疑問を呈した形だ。
同センター実現までの具体的道筋や同協会の考え方が、ほとんどの一世に伝わっていない現状を受け、中沢会長は同協会の責任者を招いて説明会を開催したい、と提案。林アンドレー愛知県人会長からは「今更、我々県連が声を上げても協会のあり方が変わるのだろうか」との疑問も挙がったが、大多数の県人会長は中沢会長に同調。賛成多数で説明会の開催要請が決まった。
県連では祭典協会に、説明会の開催を申し入れ、週明けにも開かれる見通しだという。中沢会長は「要人の来伯などもあり、この二~三カ月が重要。来年からの三年間に大きな影響をもたらす」と話す。
州政府も認める日本祭りを成功裏に終わらせ、名実ともにコロニア御三家の存在感を増す県連――。日本とのつながりを最大の武器とし、数多くの一世を抱える県連が勇気を持って、同祭典協会のあり方に疑問の声をあげたのはあくまでも祭典を成功させたいとの一心だ。「不透明」「密室政治」との批判が付きまとう同祭典協会が、県連の動きをどう受け止めるのかに注目が集まる。