8月21日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】十九日未明、サンパウロ中心部でホームレス十数人が次々と襲われる事件が発生した。このうち三人が死亡、七人が瀕死の重傷を負い病院で手当てを受けている。
死亡した三人のうち一人は路上で死体で発見され、残り二人は病院で息を引きとった。被害者全員が顔や頭を鉄棒かカナヅチの様な鈍器でなぐられ損傷がはげしいことから、警察では単独あるいは複数からなる同一グループの連続暴行殺人事件として捜査を始めた。
被害者のほとんどが泥酔状態で就寝中に襲われた模様で、抵抗の跡がないという。警察では動機として、一、商店街をはい回するのを嫌う商店主が第三者に依頼した。二、ホームレス同志のいざかい。三、ホームレスを嫌う精神異常者の衝動殺人、の可能性を指摘し、これらに基づいて犯人を追及する態度を固めた。
事件が発生したのは市内中心部セー広場と隣接するジョアン・メンデス広場とタバチンゲイラ、キンゼ・デ・ノベンブロ、コンデ・デ・ピニァウ、グロリアの各通りで、午前四時過ぎから同七時半までに十数人の被害者が病院に収容された。三人の死亡者のほか、七人が頭蓋骨陥没や顔部複雑骨折で手術を受け、瀕死の重傷となっている。
目撃者は今の所現われていないが、死亡した一人の横で寝ていたホームレスが軽症で済んだため事情聴取をしたところ、酔って何も覚えていないと供述するなど捜査は難航している。
警察が動機として推測する三つの可能性に対して商店主らは、彼らは商売の邪魔にならなかったとし、逆に使い走りを頼むなどの友好関係を強調している。またホームレス間の争いは日常茶飯事だが大事に至ったことはないとしている。関係筋では衝動的、発作的殺人の可能性が強いとみている。
市と州当局は同日それぞれコメントを発表、市側は州の治安取り締まりが手薄だとし、州側は市のホームレス収容施設が不備だと非難の応酬に終止した。
ホームレスは市内全域で一万人といわれ、そのうち二千五百人が市中心部に集中している。しかし、事件が伝えられるや路上からはホームレスが見当らなくなった。