8月24日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十三日】サンパウロ市中心部の路上生活者を狙った連続撲殺事件が十九日未明に発生したが、さらに二十二日早朝、前回の事件現場に近い地域で四十歳の女性が撲殺され、三人が重傷を負った。これで十九日に始まった一連の事件で、十五人が襲われ、六人が死亡した。九人は重体。当局は犯人を追跡しているが、まだ犯行の動機はつかめていない。バストス法相とマルタサンパウロ市長、ウメス枢機卿などが中心に、暴力への抗議集会を開いた。
路上生活者が標的にされたのは不可解とみられている。人権団体や宗教団体が抗議集会を開いたが、州と市は責任をなすり合った。事件四件のうち三件は、警察署や無料宿泊所の近辺で発生。州保安局は、異例の事件と繰り返し強調した。
二十二日早朝の犯行も手口は前回同様、就寝中の路上生活者男性二人と女性二人をこん棒かハンマーのような凶器で繰り返し強打を浴びせたもの。路上生活者を標的とした殺傷事件としては、未曾有の規模に発展した。
アブレウ保安局長官は、報道関係者や路上生活者支援団体、ブラジル弁護士協会(OAB)代表を招き、犯人像と犯行の動機について情報交換を行った。仮説として麻薬密売人と借金取り立て業者、常習的ホモ襲撃者が有力視されているが、凶器が刃物でないことから、路上生活者同士の確執、また商店主の殺人依頼も可能性も考慮できると同長官は述べた。
今回の連続暴行殺人事件は、報道効果を狙ったものか、精神異常者の犯行の可能性が強いと保安当局は踏んでいる。犯行が再発、虚を突かれたことで、州保安局は集中批判を浴びている。同長官は二十年のキャリアがあるが、同一カ所で同様の事件が二度も起きたのは今回が初めてだという。当局は市警幹部二百人を市中心部の警備責任と捜査に当たらせ、路上生活者がグループを組んで縄張り意識が強く、最も多くたむろするセー広場とコンソラソン通りを最警戒地域に指定した。
セー広場を中心とする地域に、軍警の騎兵隊とオートバイ部隊八十一人が配置され、さらに軍警特殊部隊(GOE)のメンバー三十五人、情報部員二十二人、リンチ特捜班二十三人、補欠要員三十人が召喚された。犯人解明には徹底的に取り組むと当局は話している。
市は同事件を保安当局の職務怠慢のせいにしたが、路上生活者の収容は市の責任なのに一向に改善の様子がみられないと同長官は反論した。軍警が路上生活者を宿泊所へ同行しても、午後十一時になると錠を下ろして受け付けないと抗議。選挙運動と混同しないよう注意を促した。
負傷者を収容した市立病院は、全員頭骸骨を骨折し、トラウマ状態にあると発表した。十九日の被害者は頭部だけであったが、日曜日の被害者は頭部以外も怪我をしていた。
セー広場の抗議集会では各団体代表に並んで、路上生活者代表のクリスチアーノ・ナシメントさんもスピーチし、「私の目を見てくれ。私だって人間だ」と訴えた。路上生活者がどうして大衆の面前で堂々と発言できるのかという点で、代表としてのナシメントさんを疑問視する声も挙がっている。