8月25日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】下院治安委員会と同人権委員会は二十三日、サンパウロ市で六人の死者と九人の重傷者を出した路上生活者連続撲殺事件を調査するため、合同調査班の派遣を決定した。法務省人権局のモンテネグロ聴聞官は二十四日、スキンヘッドや元軍警グループなどを注視する警察関係者と検察官から事情聴取を行う。チリのサンチアゴを公式訪問中のルーラ大統領は、まだ存在する野蛮行為に遺憾の意を表した。
路上生活者の撲殺事件は、国の問題として取り上げられることになった。下院治安委員会のサントス下議(PL)は、特別調査委員会の設置を申請した。引き続き人権委員会も同様の手続きを行った。法務省は直ちに証人の生命保護の手配を指令した。
法務省は捜査をサンパウロ州当局に一任し、捜査活動には参加しないが手抜きが認められた場合は捜査に介入することを示唆した。リオ市カンデラリア通りで九三年、路上生活をする少年八人が殺害された事件が発生したが、うやむやのまま捜査が葬られた前例がある。かかる略式処理を法務省は黙認しない考えだ。
ニウマリオ・ミランダ人権相は、ネオ・ナチズムや殺人請負集団の暗躍を重大視している。路上生活者のような社会的に無防備な弱者に対して冷酷で残忍な行為を加えるのは、背後に過激な暴力を称賛する組織が存在する可能性があるとにらんでいる。
資産家の中で非生産層の淘汰という過激思想を持つ人達の存在も、看過できない。貧困層が犯罪の温床だとして、後腐れのない底辺の弱者を見せしめに殺害するという考えを持つ人もいる。リオ市で六〇年代に浮浪児や物乞い、ホモなどを一掃すると主張したグループが存在した。サンパウロ市のビクード副市長も、人権相の懸念に同調する声明を発表した。
警察当局のこれまでの捜査は、路上生活者同士の確執と商店主の殺害教唆の可能性を否定している。証人の一人は警察官の関与を示唆した。同証人はかねてから顔見知りの警察官を事件当日、現場の近くで見たという。さらに事件が再発した二十二日にも、中心街で同警察官が徘徊していたと証言した。警察官の氏名と階級は事実確認まで極秘となっている。
加害者は撲殺に経験と知識があると警察はいう。加害者は同行者か共犯者がおり、口外を恐れて彼らの口封じをする恐れもあるとみている。また事件の前日、南大河州やアルゼンチンで活動するネオ・ナチズムのパンフレットがセー広場で配布されたと、ランセロッチ神父から報告があった。
クリニカ病院のサンパイオ精神科医は、加害者は場所と対象を変更して殺害を続行するという。殺害の動機は社会的に無用で負担と思われる人達を一掃することで、住みよい社会を築くとする思想に基づいて加害者は行動するらしい。
その行動においては、殺害しても社会的反響が少なく、無抵抗の底辺の弱者が手初めの犠牲になるという。このグループのメンバーはただ思想を持つに留まる人と、行動に移す人とに分かれるが、総数は意外に多いという。