ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 古代のオリンピックは一千百年余も続いたスポーツの祭典だが、大会の期間中は「平和」を呼び込む知恵もあった。「エケケエリア」と呼ばれる停戦期間を設け戦争を中止する申し合わせが力を発揮したのである。これは今でも引き継がれており国連で停戦決議を採択するのが慣例化しているのだが、現実は戦争と紛争が真っ盛りなのは真に哀しい▼イラクでは砲弾が飛び交いネパールでは銃声が響きわたる。スーダンの民族紛争に象徴される部族闘争もアフリカには多い。インドネシアを始めアジアでも紛争は絶えないし、こうした見方をすれば古い時代のギリシャ人にも劣ると言っていい。中世になるとヨーロッパの諸公は、戦争に疲れ過ぎたのか、双方が代表を一人出して勝負を競い―勝てば勝利者であり敗けた方は素直に敗北を認めて引き下がったというのも面白い▼クーベルタンの提唱で始まった近代五輪にしてもスタートしてから僅か一〇八年だし、とても古代ギリシャにはかなわない。こんなふうに、五輪大会も幅は広く奥は深い。それにしても日本の選手らは頑張った。金の十五は凄いの一語に尽きるし銀も銅も素晴らしい。金は東京大会の十六には及ばないけれども、ハンマー投げの室伏選手が「金」に繰り上がるかもしれないし、あるいは史上最高のメダルも▼日本では皆がテレビに真夜中まで付き合い観戦する大騒ぎ。総理大臣までが「さてどんな表彰を―」と、政界はそっちのけは失礼ながら大いに悩んでいるらしいのが何ともいい。(遯)

04/08/28