中国にはお金を嫌うような風潮があって「汚堵物」(あとぶつ)と呼ぶことがある。晋や宋の頃の俗語で「この物」の意味だそうだが、晋の政治家・王衍が「銭」とい語を嫌って代わりに使い始めたとされる。確かにカネは悪魔にも早変わりする不可思議な化け物であるけれども、持っていれば真に便利な物だし使い方によっては「善」にもなる▼日本歯科医師連盟から橋本龍太郎元首相に贈られた一億円の小切手は、言うまでもなく「お化け」である。元首相はまったく気軽に背広の内ポケットに封筒を押し込んだそうだが、こんな醜態も―故・田中角栄氏が築き上げた利益誘導型政治の落とし子と見えなくもない。政治とカネは古くて新しい課題である。政治活動にはどうしても資金がいるのは解るけれども、札びらを切って政治を動かす―そんな時代はとうに過ぎた▼事の重要性にやっと気づいたのか橋本氏は派閥の会長を辞任はしたが、検察陣の追及は厳しい。すでに逮捕者もいるし、元首相からの聴取もありそうだし単に派閥の域を越えそうな気配すらする。日歯連幹部との会合は東京の料亭で行われたが、この席には青木幹雄・参院議員会長と野中広務元幹事長もいたとされるが、ご両人とも「覚えていない」とかで謎のまた謎の薮の中▼日歯連では「同席していました」と主張しているのだから、どちらかが「嘘」をついている。尤も、検察の方でもきちんと調べるだろうし、料亭側に証言を求めるという手もある。事の次第は早晩明らかになろうし派閥政治の幕引きは近いと見ていい。 (遯)
04/09/02