9月4日(土)
二日から十四日まで(七、八日を除く)石川県人会館で絵手紙の展示会が開かれている。絵手紙とは、和紙製の葉書に竹ペンや筆、筆ペンを使って絵を書き、日常の思いを伝えるささやかな言葉を添えたもの。同県人会でその書き方教室を主宰するのは小林美恵さん。普段は神奈川県に住み、直接指導する機会は来伯時に限られるが、噂は口コミで広がり、生徒も徐々に増えている。「絵手紙を通して日本とブラジルの交流ができれば」という。
和紙に墨で書いた線は少しにじむ。「その柔らかさが魅力」と小林さん。書き手の温もりが表れ、受け取る側にも伝わるという。
「いまはコンピューターの時代。便利ですけど、このにじみはコンピューターでは表現できません」
小林さんは日本の現代美術家協会に所属。横浜市でも絵手紙の指導に当っている。二年前に来伯した際、友人から絵手紙について聞かれ、説明したところ「ぜひ習いたい」と言われたことが、ブラジルで教室を開くきっかけとなった。
昨年十一月に試験的に開始。四カ月間毎週教え、評判を呼んだ。今年は七月に来伯。二回目の教室は十月まで開催される。授業で使われる墨、筆、和紙の葉書などはすべて小林さんが日本から持ってきたもの。ブラジルに来るための旅費や滞在費も自分の財布でまかなっているという。現在の生徒は二十人以上を数える。
三月、四月の二回にわたって、生徒の作品を横浜市の郵便局で展示した。小林さんは生徒らをビックリさせようとその事実を伝えず、黙っていた。
「はじめまして 日本は今新茶の季節 おいしいです ゴクッと一杯」
「うれしくて雨に濡れながら書きました」
突然絵手紙の返事が日本から届き、生徒はやはり驚いた。思わぬところから日本との交流が始まり、制作にも熱が入り出した。
小林さんは「当初は二、三人に教える予定だった」と、予想以上の好評に嬉しい悲鳴。生徒からはいま、「もっと、たくさん書きたい」、「もっとブラジルにいて欲しい」との要望が相次いでいる。
「絵手紙の良さは誰にでも分かりやすい、その手軽さにある。上手、下手もあまり関係なく、知っている簡単な日本語だけで自分が見たもの、感動したものを表現できる」
絵手紙は日本人と日系人を繋ぐものになると小林さん。「サンパウロ以外の日系社会やウルグアイやパラグアイの日系社会にも絵手紙が広まればもっと交流ができる」と、今後の目標に目を輝かせた。
絵手紙教室は毎週火曜日の午後一時半から午後四時半まで。受講料は一回十五レアル。詳細など問い合わせは11・3884・8698(石川県人会)まで。