小泉純一郎首相来伯を機に、政府主導で日伯交流促進を本格化する動きがでてきているようだ。小泉首相は十六日にルーラ大統領とブラジリアで会談し、両国の有識者による「日・ブラジル賢人会議」(仮称)の新設を、首脳会談後に発表する共同声明に盛り込む見通しだ、と八日付け読売新聞は報じた。この会議は〇八年の移民百周年に向けて、両国の協力関係強化について具体策を提言するという。日系団体代表との懇談も予定されており、色々なレベルで有意義な来伯になるのでは、と期待されている。
八日付け読売新聞によれば、十六日にブラジリアで行われる日伯首脳会談では、ともに国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指す立場から、国連改革を推進する方向で合意する、と政府筋が明かしているという。
また両国の有識者による「日伯賢人会議」(仮称)を新設し、「移民百周年に向けて、両国の協力関係の強化について具体策を提言。経済面では、食糧・資源大国としての重要性を増すブラジルとの経済交流活性化を打ち出す」と報じている。
日本政府はすでに、インドやロシアなどとの政府間に同様の賢人会議を設けている。例えば、〇二年の日印国交樹立五十周年にそなえ、〇一年に「日印21世紀賢人委員会」を設立し、政治・外交、経済、農業、環境、姉妹都市交流、教育・スポーツ、人物・文化・芸術など十一分野にわたる百五項目の提案をした。
今年四月に第一回が行われたばかりの日露賢人会議では、座長に森喜朗前総理が参加したばかりでなく、経団連会長の奥田碩トヨタ自動車取締役会長、全日本柔道連盟理事の山下泰裕東海大学教授ら七人。ロシア側からは、座長にユーリー・ミハイロヴィッチ・モスクワ市長、アルカジー・イワノヴィッチ産業家・企業家同盟総裁が加わるなど錚々たるメンバーによって二国間の交流促進に関する提言が話し合われている。
日伯賢人会議は、移民百周年に向けてスケジュールが組まれるため、ブラジル側に日系人代表者が入ることも推測されており、今後の動向に注目が集まりそうだ。
この件について、ブラジル大使館では「本省ではそのような話が出ているのかもしれないが、こちらにはまだ来ていない」とコメントしつつも、「可能性としてはありえる」との含みを残した。「百周年に関して、首脳会談で当然話し合われるのでは」と語り、ブラジル側にもその気運が高まっていること示唆した。
ブラジル日本移民百周年祭典協会の菊池義治運営副委員長は「自分はその話は聞いていない」という。ただし、八日から小原彰運営委員長や、上原理事長、渡部顧問ら同協会幹部がブラジリアへ打ち合わせに出向いており、「それに関係した打ち合わせかも」という。
小泉首相は十五日頃、同百周年祭典協会、ブラジル日本文化協会、ブラジル日本都道府県人会連合会、サンパウロ日伯援護協会、日伯文化連盟、ブラジル日本商工会議所の代表者と対話することになっており、一部の団体から要望書が手渡されるよう。
今回の首相来伯は、移民百年祭への大きな一歩となる。政府レベルでの取組みが始まることにより、二国間のより豊かな今後百年を見通した、大きな方向性が打ち出される契機となりそうだ。