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レジストロの事情=今高まる農協の役割=(中)=農村活性目指す市の思惑

9月9日(木)

  現在、レジストロ農業協同組合(福澤一興組合長)には二十八人が加盟しているが、その内の約十人が市のプロジェクトによって加わった農業者だ。
 同組合は「計画生産・計画販売」を目標としているが、組合員が生産する野菜の種類に偏りがあるため、需要に応えられない作物がある一方で、供給過剰となって、不本意ながらサンパウロへの出荷を余儀なくされている作物もある。
 「全部売ることができないのは、まだ市場規模が小さいことと、販売機構がしっかりしていないことが一番の問題」と福澤組合長は指摘する。だが、作物の種類によって需給のアンバランスを生み出している要因は、市の政策に拠るところもあるようだ。
 二年前、同市のサミュエル・モレイラ市長が農業政策に力を入れるため、元コチア産業組合員の清水ルーベンスさんを同市の経済開発部長に指名した。
 同市にはマンジョッカなど伝統的な自給作物を生産し、臨時雇用農としてバナナ園などで働く農業者が少なくない。そのため、清水さんは雇用促進、経済振興など農村の活性化を政策に掲げ、そうした農業者らに商品作物の生産方法を教えたうえで、農協を作り加盟させ、生産物の販売を行うという計画を立てた。
 昨年の十月から二人の農業技術者を雇い、前記の農業者らに商品作物となる野菜の生産方法の指導を開始しており、こうして育った農業者も加わり始めた。
 しかし、市のプロジェクトによって加わった農業者たちの生産する作物は、種類が限られているため供給過剰となる。生産指導を行っているのは市であることから、どの種の野菜の生産方法を教え、出荷してもらうかを需要に合わせ計画的に考えなければならない。
 ただ、農業者自身の技術的問題があることも否定できない。
 一つに、先にも触れたように生産できる作物の種類が限られている。また、需要のある作物を作っている場合でも、安定的に供給し続ける技術がないことや、品質、収穫後の管理に問題があるため、高級がうりの同組合では出荷することができないという点もある。
 ただし、九九年以降、農業者の間で再燃し始めた団結への思いが具体的に動きだすきっかけとなったのは市のプロジェクトだ。
 清水さんは元コチア産業組合員の仲間でもある福澤組合長らに、計画を相談した。計画を実現するための具体的方法が模索される中、福澤組合長は最近市内に出来たばかりの青果店に注目した。
 高級な青果のみを扱うその店は大変なにぎわいを見せていた。「五万五千人しかいないレジストロで、いい野菜を作っても(買い手がいないことから)高値はつかないだろう」との先入観を覆すものだった。これが、宅配セスタへと繋がった。
 市の考えとしては先に農協ありきだったが、「できることから始めよう。興味のある人が成果を納めれば人も集まる。興味のない人を百人集めてもだめ」と福澤組合長は考え、有志でセスタを始めた。
 最初の顧客は知人から始まったが、中流階層以上の勤め人をリストアップするなど、積極的に市場開拓を行い、また信用も得られてきたことから徐々に顧客も増え、同時に参加農家も増えてきた。
 そして、セスタ販売の開始から半年ほど経過し組織も大きくなり、消費者などに対し責任を明確にすることと、それに伴う責任を共有するために、組合組織にする必要が出てきた。その年の忘年会で福澤組合長が組合組織にすることを提案、メンバーから快諾を得た。(つづく、米倉達也記者)