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レジストロの事情=今高まる農協の役割=(下)=農協の理想とする姿とは

9月10日(金)

 一九九九年のレアル暴落と、農産物の価格を低く押さえた連邦政府の政策がレジストロ市の中小農業者に打撃を与えたが、全国的な現象でもあった。
 レジストロ市の農村活性化政策は、「農村人口が都会へ流出するのを防ぐため。州農務局も協力してくれている」(清水ルーベンス経済開発部長)というが、これもよくある話だ。
 ブラジル農業拓殖協同組合中央会(原林平会長)の長田勝事務局長は、こうした背景から「(農協の必要性の高まりは)レジストロに特別なものではなくブラジル全土で十分に考えられる」とみている。
 「ロベルト・ロドリゲス農務大臣はブラジル農協連合会の元会長。自分の政治母体である農業組合をはじめ、様々な業種での組合運動を奨励している」
 農拓共とJATAK(馬場光男サンパウロ事務所長)が共催する日系農村活性化セミナーでも毎回、組合の重要性を訴えてきた。「買い手市場の中で中小規模の農業者が自分たちを守るには、組合組織を作ることが一番」
 三回目となった先のセミナーで一行は、レジストロ農業協同組合(福澤一興組合長)組合員の山地良美さん(66)の農園を見学した。昨年、夫の正明さんを脳溢血でなくして以来、息子のマルチーノさん(37)とミルトンさん(33)の三人で、蔬菜類の水耕栽培、果物や野菜の露地栽培に従事。耕地は約十ヘクタールだ。
 山地さん一家は長く組合に加盟せず、二十年間フェイラでの販売で生計を立ててきたが、最近農協に加盟することになった。
 「新しい市場を増やしたかった。自分一人ではできない」とミルトンさんはその理由を説明する。『本組合が取り扱う生産物は全て本組合に出荷すること』(コチア聖南西協同組合定款)といった規則がいまの組合にはなく、生産物を自由に扱えることも加盟を後押しした。
 「どのように生計を立てているのかよく分かりました」とセミナー参加者の森山ジョルジさん(32)。山地さんの農園を視察した感想を語る。
 森山さんは家族とともに十五人の従業員を雇って、リオ州の三十ヘクタールの土地で人参やキャベツなどの野菜を栽培している。以前は、リオ単協に加盟していたが、現在は九割をセアザに出荷、一割は買い付け人に直接販売している。
 森山さんは「少々安くても、即金でもらうことが大事」と話していた。組合が突然潰れたり、機能停止状態になり、出荷した作物の代金を受け取ることができなかった経験から、農協への不信感が残る。
 では今後農協が理想とする姿とは?
 福澤組合長は「自分ひとりでは達成できない事業を、力を合わせて成し遂げる。農協はそのための道具」と強調した。
 現在、セラードを始めとする新興農業地帯では多国籍企業などによる大規模農業が圧倒的な力を発揮している状況下で、中小農業者が生き残っていくため、農協は今後さらに必要性を増すと考えている。
 団結の有効性を訴える一方、福澤組合長はこうも話す。「しかし、組合とは組合員一人ひとりのものでもあります」
 (おわり、米倉達也記者)